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□1と0の間
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1と0の間
「あら?」
いつもと変わらない授業を打ち破ったのは学園の癒し系アイドル。ナナリーの声音だった。
アッシュフォード学園は中高一貫校であり、今行われている授業は親睦を深め様じゃないか諸君!と会長であるミレイが言い出して始まったものである。
行う事は至極簡単で、ただ単に喋って遊んで思い出を作ろうよ!ってやつだ。
そして、ルルーシュの溺愛妹であるナナリーは自然と兄達の輪の中に車椅子を進め天使の笑顔を皆に見せた時、こてん、と首を傾げ隣で微笑む兄を見た。
「お兄……さま、??」
「うん?どうしたんだい、ナナリー??」
いつもと同じ兄妹のやり取り。だけどナナリーは重ねている兄の手にまた首を傾げ、スッと頬に手を伸ばして摩る。
ナナリーの意外な行動にその近くにいたスザク、リヴァル、シャーリーは目を互いに合わせ頭に「?」を浮かばせていた。
「…ナナリー、?」
「左目、どうしましたか?」
困惑してるのは彼等だけでなく、当のルルーシュも不思議に眉を寄せていたが、妹の問い掛けにルルーシュは僅かに肩を揺らした。
「‥ああ、怪我してしまってね。眼帯をしてるんだ」
ニコリ、と笑顔を浮かべるがソレは普段彼が妹に向けている蕩けそうな笑顔ではなく、少し試す感じが取れる。けれど、盲目車椅子の少女ナナリーは小さく「眼帯」と呟くと、ぱぁ!と懐かしそうな笑顔を目の前の兄に向けた。
「やっぱり!もお、一言いって下さいよ!私、ビックリしちゃいました」
「悪いな、ナナリー。ちょっと驚かせようと思ってな」
「私には何でもお見通しですのよ?」と笑むナナリーに、ルルーシュは「敵わないな」と笑みを深くして優しく髪を撫でた。
その光景にほやほやと和む周囲を余所に、ナナリーは悪気も無く爆弾を投下する。
「にーにー、頭撫でて貰うの久々で嬉しいですっ」
「「「え???」」」
「そうだったかもな…。最近何かと忙しくて構ってやれなくて悪かった、」
「え、ちょっ」
「いいえ、お忙しい事は分かっています。けれど…にーにー?お兄様が凄く寂しがってますの……」
「…へ?、ねぇって!…」
「ほう?私がこの前尋ねた時には顔を真っ赤にして『馬鹿っ!』とか怒鳴ってたんだが…」
「おおおおいってば!聞け〜〜」
「まぁ!それは所謂照れ隠しですね!!お兄様ってば可愛いわ」
「聞けぇぇぇえ〜〜〜〜!!!!」
楽しく談笑していたルルーシュは会話を遮ったリヴァルをギロリと睨み、スザク、シャーリー、リヴァルは思わず身を竦めてしまう。けれどめげないリヴァルはルルーシュとナナリーを交互に見てビシィイ!と指を指した。
「お二人さんオカシイ!!」
「何が、」
「え、だだーってよ!ルルーシュはいつも俺≠ナ私≠ネんて言わないし!!」
「う、うん!ルルいつもと違う、それにナナちゃんが………ルルをルルを……にーにー≠セなんて!!!」
動揺しまくる2人を尻目に、ルルーシュとナナリーは気のせい。と一言で片付けてしまう。が、先程まで黙っていたスザクが口を開きルルーシュを見据えた。
「おかしい、よ。ナナリーが言っている君はにーにー≠セけどお兄様≠ヘ?
いつもナナリーがルルーシュを呼ぶときはお兄様≠ネのに、なんで今日はいきなりにーにー≠ノなっちゃったの?」
「…」
「君が話してる人は誰?その左目は本当に、怪我してしまったの?
君は、誰なんだ??」
スザクの言葉に一瞬、ルルーシュは瞠目したが、直ぐに肩を震わせたと思ったら枷が外れたかの様に笑い出した。いきなり笑い出したルルーシュにリヴァル達は驚愕し、怪訝に眉を潜めた。
「ははっ!!馬鹿だ、馬鹿だと思ってはいたが……ここまで愚かだとは!!」
「まったくですね?にーにー」
至極愉快に笑い合う兄妹に対し不安と違和感がスザク達を支配する。何かが違う。何かおかしい、変だ。と、握る手にはジットリと汗が滲む。
「…ルル、ナナ、ちゃんー…?」
震える声を発したシャーリーを瞳に捉えたルルーシュとナナリーは笑っていた。笑っていたけど感じるものは畏怖の念。
ズッ、と後ろによろめくと、肩に手が置かれビクリと震え、恐る恐る後ろを振り向くと優しい笑みを浮かべたカレンがいた。
シャーリー達は助かった!と胸を撫で下ろしたが、微笑むカレンとルルーシュの言葉に絶句する。
「そろそろお時間です。」
「もうそんな時間なのか?……折角こうしてナナリーと逢えたと言うのに」
「…にーにー」
くぃと兄の袖を掴み、眉根を下げるナナリーに、ルルーシュは苦笑を零して手を重ねた。
カレンは、申し訳なさそうに頭を垂れ、体を引くと片膝を床につけた。
「…ナナリー様、申し訳ございません。何分、我等が王は果たせばなりません使命があります故、」
「はい。……分かっております。我が儘、言ってごめんなさい。カレンさん、にーにーを宜しくお願い致しますね?」
微笑み兄の手を取るナナリーにカレンは、力強く答えるとルルーシュを見据え視線で促せば、彼は観念したのか肩を竦め、ナナリーの頬に手を触れて瞼に己の唇を落とした。
「行ってくる。」
「……はい、お気をつけて」
静かに微笑むナナリーを背に、教室の扉に手をかけるルルーシュ、その後ろにカレンが控える。
それを止めようとスザクは声をかけるが彼等は見向きもせずにガララ、と扉を開き、後ろ姿のままに言葉を発した。
「ナナリー、今夜。迎えにいく」
「!、は…はいっ!!お兄様とお待ちしてます!」
花が咲く満面の笑顔で答えるナナリーに、ルルーシュ…否。ゼロはクスリと笑みを零し、その場に困惑と動揺、疑念を残し去って行った。
「今日から黒の騎士団に入る、」
「ルルーシュだ。」
「ナナリーです。」
「「どうぞ、ヨロシク」」
08.03.28
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ゼロルル双子。
ゼロがルルに成り済まして学園に〜。この時のルルはC.C.に捕まってます