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□お隣りさんは×××!
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「すざすざ!俺ビールね〜」
「分かってるよ、じのじの」
バタン、と冷蔵庫を閉める音がし、部屋の中につまみと缶ビールを抱えた悪友のスザクが「おまたせー」と笑いながら来て、食べ物で少し散らかった机の上に置いた。
「はい、じゃあー引っ越しおめっとさーん!乾〜杯っ」
「2週間も遅い餞別どーも。」
カーン!と互の缶ビールを当て勢いよくそれを煽った。
今日、というか今夜俺は引っ越し祝いにスザクが住むアパートにやって来ている。俺達しがない学生さん。現役極貧大学生だが、前のコイツん家が欠陥かなんかで強制退去させられて、泣く泣く今のアパートに移り住んだそうだ。まぁ、詳しくは知らないけど。
最初はさ、「あーーー前の家が恋しい〜」とか「郷に入れば郷に従えなんて糞喰らえだ!」なんて愚痴ってた奴が、いきなり「僕のオアシス!」「あ〜〜!なんて素敵なアパート生活!!」
おかしくねぇ?
ま、そこまでは、あー慣れたんだなー良かった。良かった。ってなる。が、そうはいかないのがこの男、枢木スザク君。
後日、とんでもなく沈みきって、まるでこの世の終わりじゃねーの?って顔でさ、まるで廃人。
友人としては是非この理由を知りたい訳で、こうして引っ越し祝&スザクの悩みを聞こうじゃないか!を実施中なワケよ
「なーすざすざ?」
「うーん?何かな、じのじの」
「…じのじのは止めね?某脱力系ライオンみたいなキャラと被る」
「君は何の役にもたたないからね」
「うわっ!台詞言っちゃうとか鬼畜ぅ〜〜」
「鬼畜、って…僕は優しい男ですよー」
「嘘くさー。」
「……」
「ぅ…あれ??どしちゃったんの、すざすざ?」
さっきまでカラカラと笑っていたのに、目の前の友はいきなりダンマリを決め込むと顔を俯かせて片手に持つビールをぐしゃり、と握り潰した(空っぽだったからよかった)。
「ううぅ〜〜…そう、さ…そうだよ、僕は優しい男さ!!」
「え、ちょっ!?」
震えたと思ったら、突如顔を上げてブワッ!と泣き出した。
おいおいおいおいおい…!!!まだ缶ビール1本なんだけど!?、なんて俺のキョドりを知らずにスザクはえぐえぐと涙を流して鼻を垂らす。
「…ぅい、ぐず……お、お隣りさん!!るるぅーーじゆーっ!」
「お、おう??」
「……ひ、惚れ…でぼっ!こ、ここここ…いで!!…ばるっばつ……!!!じのじのォォオ!!」
あーーー何となく理解した。
つか、なんていう災難なんだ、お前さん……
今のを解釈すると、こうだ。
隣の部屋の《ルルーシュ》って言う彼女に一目惚れをした。ああ!なんて幸せなんだろうな〜〜、って思っていたら、何と彼女には子供がいて、バツイチ。だった
「………」
ワンワンとガキ見たいに泣きまくるスザクに、同情を通り越して呆れしかない。馬鹿だ、まじで馬鹿すぎる。
泣きわめくスザクの頭をよしよし、と撫でて宥めるがあんまり効果は無いっぽい。
いくら言葉を投げ掛けてもコイツは依然とブルーまっしぐら。こんな事なら酒飲ませなきゃよかった、と今更後悔しても遅い。
「〜〜〜すざーく、くぅーん」
泣くなよーっと言う俺の方が泣きそうだ。全くもって泣き止まない彼にお手上げ状態で、どうしよう…と頭を抱えた時、神の導きか何かか部屋の中に聞き慣れないインターフォンの音が響いた。
「……」
「客だぞ、スザク」
「………………居留守」
いやいやいや、居留守使うなよ!散々喚いてなんだそれ。
俺出ていいのか?と聞けば再びインターフォン。ふと、スザクに視線を向ければ彼は小さく頷き手で急かす。
このやろう。
「ったく!しょーがない子ですねぇ〜〜。あ、はーいはーい!今でまーす!!」
足早に玄関につき、扉を開けた。
「、スザク?の、友達さんか?」
眼に飛び込んで来たのは所謂絶世の美少女。
夜露に濡れた漆黒の長髪をゆるく後でくくり上げ、肌は雪の様に白く細い。瞳は宝石みたいにキラキラ輝く紫色で、俺をその瞳に映した彼女は一瞬驚いたが、遠慮がちに微笑みを浮かべた。
「…………ぇ、あ…ああ!うん、スザクの友達のジノ!ちょっと飲みやっててさ…もしかして煩かった?」
「ジノ、君だな?いや、五月蝿くは無かったが、そうか…なら丁度良い。これをスザクに渡してくれないか?」
今の俺、うわ、うわっ、うわー!!!って感じに舞い上がりまくり。名前呼んでくれた!!笑ってる!!めちゃくちゃ可愛いっ!!ってかモロタイプ!!!
一気に色んな事が駆け巡り、顔が自分で分かる程熱い。
「勿論!お安いご用っ」
じゃあ、と彼女が両手にしてるのは鍋、で。ううん?と首を傾けたら彼女はクスクスと笑いながら、今は俺の手の中にある鍋を指差した。
「肉じゃが、ちょっと作り過ぎてしまってな。…家は、2人暮しだから、」
「へぇ〜〜、」
素直に感嘆し、後、2人暮し??に違和感を覚えた俺は目の前で少し悲しげに微笑む彼女に尋ねた。
「…ふ、2人、??」
「ん?ああ、俺と子供」
ピシリ、と固まる俺。を、不思議そうに見つめる彼女。
俺は震える声で再び尋ねた
「お、おおお子さん…???」
「?ああ」
「ち、ちちち因に、今お幾つで………いらっしゃるので…?」
「ぅん?子供は今年で4つだ」
「あ、いえ……貴女の…」
「俺?28」
「嘘ぉっ!!?」
余りの衝撃的事実に俺は思わず声をあげ、まじまじと18歳辺りに見える美少女……否、28歳の子持ち美女に困惑と動揺が隠せない。
そんな俺に彼女は、馴れてる風に「嘘じゃない。」と苦笑を零した。
「まじ、っすか…」
もう、色々と驚きだ。
まさか、自分が一目惚れした相手が子持ちで、しかも×持ちだ、なんて!!
うなだれる俺にその時、体内に嫌な物が走った。
そう、どこかで聞いたことある話し。デジャヴュ??いいや……これは………―――
「…お名前、いいですか?」
「そうだ、言って無かったな、ルルーシュ。ルルーシュ・ランペルージだ。」
お隣りさんは×××!
(……………スザク、一緒さ…)
(え?なになに??)
(………………自暴自棄になりたい。ってか寧ろ、私は貝になりたい!!)
(えと…、とりあえず。飲む?)
(喜んで!!!!!!)
08.04.07
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ジノとスザは似た者同士。カプ違くて私は悪友推奨。
ルルは夫(しゅな)に先立たれちゃいまして、子供(ななり)を溺愛しまくってます。