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□青木ヶ原樹海の神様
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死のう
そう思ってここ、自殺で有名な青木ヶ原樹海に来た理由は覚えてない。ああ、勿論こんな誰もが知ってる超メジャーな場所に居るんだから、自殺願望で来た。のは事実だ。
だけど、一向にその源となった理由が綺麗サッパリ忘れている。
僕の名前は枢木スザク。今年名門私立高校を卒業する19の健全な男子高校生だ。いや、…だったの間違いだ。高校生がこんな薄気味悪い場所に居ないし、第一、富士の樹海は一般者は立入禁止になっているから。(鉄柵が張り巡らし高い立入禁止柵を乗り越えて来たんだからその時の僕は相当追い詰められていたみたい)
「…………はぁ」
小さく吐き出された溜息は辺りに短く響き、ザワザワと不自然な反響を残した後、僕は見馴れた木々を仰ぎ見た。
眼に映るのは不気味に変形し、人々を闇の世界へ誘う魔の力を宿した樹木。端から見れば全て同じ様な場所に思えるけど、僕にはそうは見えない。
一度入ると二度と出られなくなるぞ。と言われている富士の樹海だが、僕はその気になればいつだってこの鬱蒼として世界から孤立した場所から出ることだって出来るだろう。
包囲磁石も地図も、ビニールテープも要らない。簡単に言ってしまえば勘≠ニいうものだ(昔っから勘と運動神経だけは超人以上だ)。
「雨、降らないかなぁ」
最近はめっきりだ。と零し、手元にあるスポーツ飲料水のラベルが貼ってあるペットボトルのキャップを外し、グビグビと喉を潤す。富士の樹海で飢え死に。なんて誰が言ったのだろうか?
後を絶たない自殺願望者達は皮肉にも飲み物と食べ物を持ってやって来て、それを遺して去って逝く。うん。まるでわざわざ僕に食べ物を与えに来てるみたいじゃないか。(まぁ、こんな考え方は道徳心に反するみたいだからそっと心の内に秘めておく。)
少し歩けば、花束、飲みかけの飲料水、バック、食べ物、亡くなった仏さん。
僕は誰にも供養されない彼等を見つける度に手を合わせ、冥福を祈る。その代わりに彼等が遺して逝った品々を僕が使わせて貰う(丁度いい等価交換)。
「ふぅ、もうそろそろかな?」
キュ、とボトルの詮をキツク締め、鮮烈な橙と赤を交え西へと沈む巨大な球体を横目に映し、僕は彼女が来る楽しみと嬉しさに胸を高鳴らせながら簡易にだけど身嗜みを整えた(既にボロボロとか気にしない。今着ている服も彼等が遺して逝った物)。
*
辺りは真っ暗闇。
街灯も何一つ無いここは本当の闇。相当の注意を配ら無ければ足を茎根に取られたり、木に身体をぶつけたりと大変だ。(でも、僕の持ち前の運動神経と野生的勘でそんなの問題無いけど。)
まぁ、用心に越した事は無い。
僕は樹海に咲いていた綺麗な花を数本手に持ち、足取り軽く彼女が待っているだろう大樹木の前にやって来た。
(あ、いた。)
遠目からでも分かる彼女の存在。キラキラと光を携え輝き放ち、フリルがふんだんに使われた真っ白な洋服に、この闇とは異なる漆黒の長髪。バランスの取れた肢体とビスクドールの様に美しい顔立ち。
彼女だけが異質な存在。
「ルルーシュ!!」
僕の弾んだ声音に合わせ、茎根に腰を降ろしていた少女、ルルーシュは真っ白な服を翻し、長い髪を宙に浮かばせながら僕の元に飛んでやって来た。(飛ぶは飛ぶでも、彼女は空を飛んでくるのだ。)
「すざくっ!」
きゅう、と僕の首に抱き着いて甘えて来る姿に頬が緩み、愛しさが溢れてくる。
「遅くなってごめんね?待っちゃったかな??」
「いや、私も今来た所だ。気にするな」
まるで恋人達がデートの待ち合わせ場所での一つのやり取りの様。だけど、その待ち合わせ場所が樹海の奥深く。だなんてミスマッチ。っていうか異様だ
「ね、ルルーシュ」
「なんだ?」
抱きしめていた腕の力を緩め彼女の艶やかな髪に摘んで来た彼女と同じ瞳色、藤色の花を飾り「うん。綺麗だ、かわいっ」と言えば目の前のルルーシュは頬を微かに染め上げて照れくさそうにはにかむ。
「、ありが、とうっ」
「〜〜ん!ルルーシュ可愛い過ぎるよ!!」
「ほあぁああ!?」
余りにも可愛い過ぎるルルーシュに我慢出来ずに、僕は彼女を怪我しない様にしながら強く抱きしめ、身体に顔を埋めた。
「キレイ。キレイ。ルルーシュはキラキラしてて眩しい、よ」
この真っ暗な世界で唯一の光は彼女だけ。光帯を身に纏い、微粒の粒子が周囲を照らす。
僕の身体とルルーシュの身体が光に包まれ、まるで一つの物。みたいで凄く嬉しい。
そう、零せば僕の腕の中で抵抗していたルルーシュは諦めた様に溜息を着くと、しょうがないな。と優しく微笑みを浮かべ僕の頬を手で摩る。
その仕種笑顔にドキリ、と胸が弾んだ。
「ばか。」
たった一言。
彼女に言われるばか≠ヘ心地良い。だって、ルルーシュの言うばか≠ヘ
「あいしてる」
なのだから。
青木ヶ原樹海の神様.T
(ルルーシュと一緒なら、死の世界は眩しく暖かい世界に)
080508
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青木ヶ原樹海の神様シリーズ@
長編ではなくて中編にしました。
ゼロ様出て来ます。るるちゃまにょたで神様ですよー
リハビリ小説