long
□枢木組の受難
3ページ/3ページ
枢木組の受難(参)
「わ…若??」
スザクの部屋を訪れた藤堂と組の者達は、主の異様な行動に絶句し、何をなさっておられるのですか!?と声を荒げたくなった。
「え、えと…」
そんな気持ちをぐっ、と飲み込み藤堂は主を見つめ、変な焦燥感にかられつつ理由を聞こうとしたら、先にスザクがニコリと人の良い笑みを浮かべた
「お姫様を迎えるんだから、少しでも意思疎通出来た方がいいでしょう?」
「…………、」
お姫様。と藤堂は自分の口の中で復唱し、だからっていきなりコレは無いでしょう…若!と目の前で1から始める超簡単!初心者用英会話マスター2008≠フテキストを聴きながらテレビから聞こえる外国人ティーチャーの発音を真似する枢木組の若君、枢木スザクに渇いた笑みしか浮かばなかった
「あ、はははは………」
そして、深い溜息。
目先には、そんな部下達の気持ち知らずの若様が真剣に発音中。
しかし、藤堂の中に一つの疑問が浮かんだ。
何故、お姫様≠フ為に英会話≠勉強しなくてはならないのか??
だって、若君、のお姫様≠ヘ…――
「……うん、僕自身も可笑しいと…不思議に思ってる、よ」
眉根を下げ苦笑するスザクに、ハッと自分の思ってる事が口に出てしまったと気付いた藤堂は、慌てて床に手と膝を付き頭を下げ謝罪をする。自分が仕出かしてしまった事態にダラダラと冷や汗を感じながら額を床に擦りつける。
けれど、当のスザクは藤堂に「顔を上げて」と言い、重ねて「大丈夫だよ。」と言い放つ
「約束、なんだ…7年前の」
「わ、か………」
フッと視線を空へ向けるスザク。翡翠の瞳はどこか寂しそうだったが、懐かしさと愛しさが混在し、その瞳に映っていた。
(………7年前、)
たった一つの約束を、護る為に此処までの地位に来た。
君を思うと今でも胸が焦がれ、はち切れそうな想いが溢れ出しそうだ。
ああ、僕のお姫様!!
もうすぐ、我が手に抱ける
7年前、…………
出会ったのは
孤独な、くろねこ
08.03.03