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□太陽フレア
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 太陽フレア



謁見の間。
そこにはブリタニア帝国現皇帝と次期皇帝候補の皇族達、それに仕える騎士達が神妙な面持ちで漆黒の彼を見ていた。
礼儀的挨拶はしたものの、そこからは一切の言葉はつむがれずに抑揚の無い、無機質な瞳を畏れる事なく、全ての象徴である皇帝に向け続けている。


「……」

「……」


周囲には息さえままならない程の重圧がかかり、気分を悪くする者さえ出てきているが、この部屋を皇帝より先に出る事は不敬罪にあたるので誰もが、早く終われ!と意中の彼に視線を集中させる。

だが、彼は何も話さず、何も語らず、ひたり。と目の前で踏ん反り返る皇帝…自分の父を見据えるだけだ。



「ルルーシュよ、」

先に言葉を発したのは漆黒の彼ではなく、皇帝である事に周囲は動揺を隠せずに彼の対応を見守った。

「はい。」

にこり。と先程の無機質さは無いが何処か嫌な物が伝う笑みだ。


「何故、反逆など愚かな真似をしたのだ」



そう、今皇帝の前で謁見しているのはブリタニアに脅威ともなった黒の騎士団≠フ頭ゼロ≠ナあり、7年前にエリア11で亡くなった筈のルルーシュ・ヴィ・ブリタニア=B漆黒の髪に至極の宝石、アメジストを持ち、片目は拘束眼帯によって色は分からない。けれど、その美貌はこの世のものとは思えない程に可憐で優雅で美しい。

そんな彼は皇帝の質問に笑顔を貼付けたまま言葉を返す。


「ブリタニアをぶっ壊す為に」


一瞬にして部屋に波及する困惑の音にルルーシュは相変わらずの笑顔で一歩前に足を進めれば、ヒラリと皇服が風に舞う。
それと同時に皇帝の前へ瞬時に守りに入るナイトオブラウンズ=Bの、中にいて困惑と驚愕に瞳を揺らす彼を見つけたルルーシュは、ニタリと人の悪い笑みを浮かべた。



「そうですね、いい機会なので話して差し上げますよ?私、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが貴方達皇族を憎む理由を。」


「…、」


ルルーシュの言葉に微かにだが皇帝は眉根を上げ、自分の騎士達を片手で、退け。と命令した。その中の彼は異議を唱えようとするが、皇帝の命令は絶対であるので辛辣に顔を歪めながら後ろに下がる。
ルルーシュは満足気に瞳を細め、皇帝の後ろにいる彼、スザクを視界で捕らえながら口を開いた。



「‥何から話しましょうか?
やはり母であるマリアンヌ妃殿下のテロリストと見せかけた暗殺。ですかね。貴方も随分と小癪でみみっちい事をなさいましたね?‥安全なアリエス離宮に侵入者?、ハッ!馬鹿馬鹿しいにも程がありますよ?その時の護衛はコーネリア姉上、でしたが母上は彼女を自分の護衛から外した。そして、その日に殺害されました。…‥意味、解ります?その低脳な知能で解りますか?
‥唯一の肉親であるナナリーはショックで光を閉ざし、歩行という手段を失いました。母の後見であったアッシュフォードは没落し、貴方が言う弱者となった私達は留学という建前で日本に、殺されに行かされました。ええ、そうでしょう?私達が死ねば日本に攻め込む為の正当な理由が出来ますからね。貴方らしく何の捻りも無い馬鹿な計画で、まぁ〜上手く行った事には拍手してあげますよ?」


その場にいた人達は息を呑み、淡々と物を語るまだ20に満たない少年を前に驚愕に眼を刮目する。
皇帝に向かっての数々の侮辱を物ともせず、寧ろ楽しんでいるみたいな彼に嫌な冷たい汗が伝った。



「大体の理由、解りました?
まあ、これ以上話しても貴方の知能じゃ無理があるのでやめてあげますよ?」

クスリ、と綺麗な笑みを浮かべたルルーシュに一番始めに食いついたのは、彼。
純白の騎士服に身を包んだ彼は怒りに体を震わせ、銃をルルーシュに向けていた。


「、ルルーシュ!!!」


スザクの怒号にルルーシュは視線だけ彼に向け、柔らかく微笑んだ。


「ニ度目。」

「―ッ!!?」


大袈裟に肩が上下し、スザクの脳裏に神根島の事がフラッシュバックされ、微かにだが、カタカタと銃を持つ手が震える。

クソッ!とスザクは悪態をつき、自分の意思と反して震え続ける己の腕を忌ま忌ましく感じながらも、その瞳はルルーシュのみを捕らえている。


「、」

しかし、ルルーシュはスザクの憎しみと怒りに支配されながら、どこか縋る様な瞳に眉を潜め、フッと、視線をスザクから一瞬逸らしたと思ったら、次にスザクを見据えたルルーシュの瞳には一切の感情は見当たらなかった。
その瞳は冷たく、まるで‥お前なんか要らない。消えてしまえ。と言われる様なものに、スザクは喉の奥で小さく声を発した。



「ねぇ、皇帝陛下?私がこの謁見の間に通されて何もせずに、のこのこ帰るとお思いで?私が始めに言った言葉をお忘れですか?」


スッ、とスザクから視線を皇帝に戻したルルーシュは空を仰ぎ声を荒げてて言った。


「ブリタニアをぶっ壊す、と!!」


瞬間、城中に響く地響きに似たものと、無数のガラスが割れる音と人々の絶叫と悲鳴。


「、何!!?」

「貴様!!何をした!?」


周囲はパニックに陥り、騎士達は目の前の少年を捕まえ様と剣や銃を向け怒号が行き交う。が、ルルーシュは不敵に笑みを携えたまま無残に砕けちった窓に視線を向ければ、突如として現れたナイトメアフレームとは違う見たことも無い真っ白な機体がそこにいた。


「ランスロット!?」


誰かが叫ぶが、その声は白い機体から聞こえてきたまだ幼いと思われる声音に否定され、周囲は今だ混沌としている中、ただ一人、ルルーシュだけが嬉しそうに笑っていた。



『ルルーシュ!?遅くなってごめんね、…無事かな??』


「まったく、遅すぎる!……けど、ちゃんと来てくれて嬉しい。」


『―っルルーシュ…、君を護るのが僕の存在意義だからね。』


「そう、だな。…愛しき我が騎士、キラ・ヤマトよ」


この場所に似つかわない、恋人同士みたいな甘く暖かい空気が2人を包み、周囲はもう何が何だか分からなくて恐怖に顔を歪めている。

ルルーシュは白い機体に愛おしむ様に足を進めるが、突如聞こえた発砲音に周囲は静寂を取り戻し、ゆっくりと視線を向ければ硝煙が立つ銃をスザクが握っていた。


「―、ルルーシュ!!!」


「…」


けれど、ルルーシュは視線を投げかけただけで静まり返る部屋を何事も無く窓の方、白い機体へと歩を進め、白い機体はスッ、と手を差し出してルルーシュはその掌に乗った。


『我が名はキラ・ヤマト!SEEDを持ち、不尽の機体であるフリーダムのパイロットだ!!お前達の至極の宝石は僕が貰い受ける!返して欲しくばソラ≠ヨ来るんだな!』



空気をつんざく轟音が辺りに響き、フリーダムはルルーシュを大切に抱え空へと舞う。



「ルルーシュー!!!嫌だッ!!もう、…―君を失うのは!もう嫌なんだ!!!!」


破壊された窓に身を乗り出し叫ぶスザクが最後に見たのは、こちらを静かに微笑み、微かに動いた唇と頬を伝う、涙。













『 バ イ バ イ 』









「―ッ!?ルルーシューーーー!!!!!!!!」
























白い機体は国の宝を持って

ソラ≠ノ消えました。


08.03.17

 

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