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□殺し屋と皇子様
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 殺し屋と皇子様



ターゲットは某大国の17皇子。
名前は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

期間は依頼を受けた日から1週間後の満月の時まで。それまでに皇子の命を絶つ事。
俺様にかかればこんな依頼、数日で片付けて、とっとと帰国出来るものだと思ってた。…そう、本人に出会うまでは、な……











「ルルーシュ」


「リボーン!
今日は早いんだな?」



スッと闇から姿を現した俺に、暗殺対象の皇子様、ルルーシュは顔を綻ばせて自分より小さい俺を疑う事なく抱きしめた。



「ああ。お前に早く会いたくて来たんだぞ」


細く、華奢な体に腕を回し、その背中を数回叩く。頭の上から「嘘でも、嬉しい」と微笑む彼の声。




(…嘘、)

そうだ。この行いは全て嘘だ。
彼を安心させて殺害しやすくする為の罠であり、作戦。

俺の懐にはいつでも抜き出せる様にある愛用の黒拳銃。というか、俺自身が生きる殺戮兵器だから、こんな、ひ弱な皇子様なんて簡単に殺せる。


だが……、俺は、彼の。自分の常闇の瞳とは違う全てを魅了するアメジストに捕われてしまった。
いや‥、出会った瞬間に、だから下世話な言い方をすれば、俺は殺す相手に一目惚れ≠、してしまったんだ。
儚く美しい一輪の薔薇。例えようがないルルーシュの美しさ、





なんて、滑稽で愚かな。










「ルルーシュ、ルルーシュ‥」

宝石みたいな名前を紡げば、愛しさが心に広がってくる。
自分と同じ低体温と漆黒の髪、自分と異なる瞳の色と身長。


愛しくて、憎たらしい








「‥…リボーン?」



(すき、すきだ、すきなんだ)



「どう、したんだ?」



(すき。…‥絶対に、言えない)



「、大丈夫。何も、…大丈夫。」


(馬鹿だ。)



「だから、…‥‥」



(おまえも、おれも)






ルルーシュを抱きしめていた己の腕をゆっくりと外し、袖から出てきた無機質なソレに力を込める。

クソッ…、手が震える




今だに俺を抱きしめたままでいるルルーシュに頬を擦り寄せれば、彼だと分かる、薔薇の匂いが鼻を掠めた。








「今日は、満月だ…。」























































「ルルーシュ」

「ルルーシュ」

「ルルーシュ」


どす黒い紅を地面に垂れ流し、動かなくなった人間だったソレを見ながら愛しの皇子の名前を紡ぐ。



ずっ、と滲んで跡を残す血を拭い、窓から差し込む月の光に眼を細めた。

「…」


悲しくは、ない。
寂しくは、ない。
悔しくも、ない。


涙は、…出ない。



「はっ…、俺は相当イカレちまったらしいな。」


くしゃり、と前髪を掻き上げ、持っていたボルサリーノを死体に投げつけ、短剣で中心を突き刺す。瞬間、嫌な音がしたが気にはしない。


それは、

殺し屋・リボーンがこの世から消えた音。




「依頼主…いいや、君主を裏切ってはこの世界じゃあ、もう生きては行けねぇからな」




吐き捨てる様に呟いた言葉は誰の耳には入らず、さよなら≠ニだけ紡ぎ、闇の中に消えて行った。


























































「おかえり、リボーン!」

「ただいま…、ルルーシュ」




08.03.20


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