駄文@

□ジャミ監F
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とあるスカラビア寮生の独り言




僕はスカラビア寮寮生。
瞳を与えられていない、そこらのモブという認識で構わない。
こんな名もなきモブに語りの場を設けてもらうなど心苦しいが、どうか聞いてほしい。
最近、我がスカラビア寮副寮長がとってもご機嫌な件について話したいのだ。

ご機嫌の理由は、オンボロ寮の監督生だ。
副寮長と監督生はお付き合いしているのだ。
秘密にしているわけではなさそうだが、知ってる人も疎らといった感じで、僕も最近知ったぐらいだ。

何故知るに至ったのか。
それは最近の副寮長が堂々と監督生とイチャつくからである。
そう、ここ最近の副寮長は酷いのだ。
そんな事今までなかったのに、何故そうなってしまったか、経緯は謎だが、とにかく人目を憚らずイチャつくのだ。
僕はそれでやっと知ったのだ。遅いくらいだろう。

しかし副寮長のリミッター解除はすさまじく、学園内でも通りすがりに抱きしめたり、いきなり手を掴んでどこかへ消えたり、いきなりキスしたりと、目撃情報も多数出ている。
男子校でこれは暴挙だ。殺意の波動しか生まれない。
しかしウチの副寮長は強いんだ!何をやらせてもソツなくこなす、隠れた天才。そんな副寮長に誰も口も手も出せない。
そう、僕らモブはただ黙って見守るしかないのだ、この馬鹿げたカップルのイチャイチャを。
しかし、殺意は日に日に笑いへと変わっていった。
監督生の仕業だ。監督生は決してジャミル先輩にノラない。ふざけるのだ。茶化すのだ。
それが今、絶対に笑ってはいけないスカラビア寮と化し僕らの腹筋を強制的に鍛えさせているのだ。

そんなある日、カリム寮長から声をかけられた。

「悪い!ジャミルを見かけたら、これを渡してくれないか?」

カリム寮長の方が会うタイミングがあるのでは?という心の声が聞こえたのか

「オレ、これから勉強会でな、リドルとアズールを待たせてるんだ!すぐ使いたいって言ってたから、頼む!」
「わ、わかりました。」

受け取った品物はそんなに大きくもない。細長い箱が入った紙袋。
とりあえずすぐ終わらせてしまおうと副寮長を探すことにした。が、しかし副寮長はどこにも見当たらない…。
……嫌な、嫌な予感がする…。ど、どうしてだろう…。いや、もうわかってる。僕はきっと、ジャミ監時空に片足どころか両足つかってズブズブに沈んでいるのだろう。
恐らくっていうかもう、どうせ2人きりでイチャついているに決まっている。
このまま探していたら、僕は2人の甘い密会をお邪魔してしまう事になる。
まだイチャついてるだけならいい、ヤッてたらどうする?
おいおい、舐めてもらっちゃ困るぞ。僕は童貞だぞ?刺激が強すぎると思わないか?いやむしろ、お勉強させていただきたいけれど。
まさか僕にモブおじさん適正が眠っているとでもいうのだろうか。いや、ジャミ監時空に巻き込まれたからこそなのか?とか、色々考えてたら、僕は人気のない廊下に佇んでいた。
放課後の学校はただでさえ人も疎らになってるのに、僕は人気のない方へ来てしまったようだ。
いや、これは僕のスキルの為せる技なのかもしれない。
匂うぞ。あの隅の空き教室だ。あの辺りがどうしようもなくあやしい。
しかしあたりはシンと静まり返っている。
防音魔法を使っている可能性もある。しかし外の音まではさすがに消さないだろう。
どうしたものかと視線を廊下の角へやった時、クラスメイトのイグニハイド寮生の姿が。
好機。

「おーい、お前、ジャミル先輩見なかったかー!!!」

近年稀に出ないクソデカボイス。
奴は僕に気付いて近寄ってくる。

「見てないけど。さすがにこのへんにはいないんじゃ」

奴がそう答えた時、空き教室の扉が開いた。
やはり、僕の勘に狂いはなかったというわけか。出たぞ!ジャミル・事後・バイパー先輩だ!!!
何という凄まじい色気の暴力!何故息が荒いのか、何故軽く衣服に乱れがあるのか、何故ベルトが外れているのか、そこにだけは触れてはならないぞ!僕らはモブ、出過ぎた発言は禁止されている!しかも副寮長はまさに捕食者の目で僕らを見ている!蛇に睨まれた蛙の気持ちを体感せずにはいられないッ!

「…俺に、何か用か?」

しかしスカラビア寮生を把握しているだろう副寮長は、僕がスカラビア寮生である事に気付いたのか、すぐに笑顔を作った。

「ひ、ひゃい、これを、カリム寮長から渡すようにと…。」

震える声と手で、ブツを差し出す。

「カリムが?…あぁ、わざわざすまなかったな、ありがとう。」 

そう言って、副寮長はまた空き教室へと戻って行った。
残された僕と無意味に被弾したイグニハイド生は、そろそろとその場から退散するしか選択肢はなかった。

「…いたな。」
「巻き込んでごめん。」
「いや、いいモン見れたわ。」
「は?」
「奥に監督生がいた。」
「…やっぱりか…。」
「…あれは確実に事後だな。」
「うん、事後だ。」
「お前モブおじの素質あるんじゃね?」
「うん、試験があるなら受けてみたいよ。」


その後も僕はこのスキルのせいで度々、学内でイカガワシイ行為に耽る2人を目撃する。
本当に、頼むから、学校内ではやめてくれないだろうか…。
最後に、誰にも言えずに、ただ黙認しているだけのモブの話を聞いてくれて、ありがとう。







追記 モブおじさん適正とは
主要人物キャラに絡む確率が高いモブの代表格。進化の過程では絡みに参入したり寝とる事も可能なモブにとっては憧れのおじさん。
尚試験はちゃんとあり選ばれしモブだけに通知が届く仕組みになっている。
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