駄文@

□ジャミ監B
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平静を装いながら、唱えながら、彼の頭を優しく撫でる。
もう元のようには戻れない。
わかってはいたけれど、予想以上だ。
セックスって、麻薬に近いんじゃないかと思った。

一ヶ月、セックスしていない。
ただそれだけの事なのに、こんな僅かなスキンシップで下腹部が熱くなる。

私は性欲を煮えたぎらせていた。
元々、性への興味や好奇心が一般女子と比較して飛び抜けている自覚と自信がある。
処女を守れていたのが奇跡なほど、知らない知識を自ら学び、エロ検定があったら全国一位になれるのでは?と自惚れている程だ。 
実技ももちろん抜かりはない。
初体験が痛くもなければ出血もなかった事については、己に心当たりしかなかった。

だけど、私から誘う事はしなかった。
そもそもスキンシップすら躊躇う。
いざ彼の顔を見るとあまりの美しさに固まってしまう。
この美しさを見慣れる日はくるのだろうか、いや無理だ。永遠に見惚れていたい。
彼が忙しいのも知っているから、そんな彼に無理をさせたくはない。
正直あんまりセックスし過ぎて、後々飽きられたりなんかした日には泣き暮らすしかないというのが本音だけど。
自分といる時くらいは、ゆっくりしっかり休んで欲しい。
落ち着いて休める場所でありたいと、本心から思っている。

なのに私の体は賛同しない。
ただ抱き合っただけ、ただキスしただけ、ただ手が触れただけ、頭を撫でられただけ。
恋人なら当たり前のスキンシップ。
ただそれだけで、下着を濡らすようになったから。
セックスをしたのは、大雑把に数えて2度だけ。
その2度だけのセックスは、とてつもなく甘い快楽をもたらした。
ただ、それだけなのに。

現在ジャミル先輩は、私の腰回りに抱きついている。顔は下腹部に近い。
モゾモゾと顔が動くのすら、ドキドキしてしまう。 
下半身にとても近いところに顔がある。
今も下着がヤバいことになっている自覚がある。
もし匂いでもしたら、音が聞こえたらと、内心ヒヤヒヤ、そしてドキドキ。
いやらしい匂いがする。なんて言われたら、どうリアクションするのが正解だろうか。
それなのに、妄想してしまう。
こんな自分がジャミル先輩にバレてしまったらと。
こんな所でこんなに濡らして、いやらしいなと、攻められたら。

その時、不意にジャミル先輩が私を見上げた。
私はジャミル先輩を見ていたため、視線がかち合う。



「…ユウ?」
「!!!」



彼女の表情を見た瞬間、イケるぞと煩悩が囁いた。
俺はアクセルを踏み込んだ。
今の今までここでする事を躊躇っていたのに、彼女がそれを許してくれそうな雰囲気を察知すれば話は別。
むしろ願ったり叶ったりだ。

「どうした?」
「…ジャミル先輩、疲れてますよね?」

頬を赤らめたまま監督生は呟く。
実際、明後日に宴を控えている。
俺はその準備に追われていた。 
監督生とグリムだけならまだしも、客は予想外に増え続けているのが原因だ。
帰ってカリムと話すのが怖い。客はまだ増え続けるかもしれない。
カリムが昨日、監督生の姿を見るなり、宴をしようと言い出した。
カリムは今日を予定としたが、準備のために日にちを伸ばして明後日に落ち着いた。
彼女はそれを知っている。目の前でそのやりとりを見ていたのだから。

「主に精神的にな。」
「だから、大丈夫なので、ゆっくり休んで下さい…。」
「大丈夫には見えないな。」
「…言わせますよね。」
「言ってくれないのか?」
「……ちょっとだけ?触ってほしいなぁ、なんて…、思っちゃっただけ…、です…。」


初めてと言ってよかった。
監督生の口から、スキンシップを求めてきたのは。
そんな監督生が愛らしくて、純粋に嬉しい。

「…どこに、触れたらいいんだ?」 

妄想に引っ張られないように。
ゆっくりと起き上がって

「…髪…?…唇…?それとも、指…?」

言葉にしながら、指先で触れていく。
どうしようもないくらいに興奮している。まだ自分を抑えて、きちんと雰囲気を作り上げる。下準備は大事だ。
だけど、それだけじゃない欲が俺を突き動かしている。
本命はこっちだ。
さぁ、口に出して言ってみろ。
監督生の、ユウの言葉で聞きたい。




「…前、シた時、みたいに…」




恐る恐る、ゆっくりと言葉にしていくだけで身体が熱いのは、その視線のせいだ。
まるで、ジャミル先輩のユニーク魔法にかけられたみたい。
でもこれは、私の意思だ。
私の言葉を期待する眼差しに、ジャミル先輩もまた私と同じように、平然を装っているだけなのだと知る。
そう見えてるだけで、違うかもしれない。だから煽りたくなる。
今はただジャミル先輩に触れて欲しい。
素直な気持ちを口に出したら、どんな反応をするのだろうか。
この、一見涼しげに見える顔を崩せるだろうか。
ゾクゾクとワクワクが全身を襲う。



「…ジャミル先輩の…、…長い、指で…」



ゴクリと、ジャミル先輩の喉仏が上下する。
それを見て確信する。
私だけじゃない。
ジャミル先輩の手に、そっと触れる。



「…ぐちゃぐちゃに、されたい…です…」



ジャミル先輩は満足そうに微笑み、私にキスをした。
深く、飲み込むように、味うように。
キスはなかなか終わらない。
ただ、口内を犯す彼にしがみつく。
はやく、この熱をどうにかして欲しい。


「ハァ、ん、ぅん…」


吐息の隙間に唾液が絡む音、私の唾液すら飲み込む音、キスをしながら頭を撫でられる、身体のラインを確かめるように背中を滑る手、全てが気持ちよかった。


「ン…」


唾液に塗れた唇同士がただ重なる距離。
キスの間ずっと私を見ていたジャミル先輩は、まだキスを終わらせる気はないようで


「んむ」


返す言葉は許されず、また深く。


「じゃみ、ぅ、せん、ぱ…」
「ん…」
「んむ、ん、んぅ…」


このままだと日が暮れてしまう。
キスしただけで終わってしまう。
言葉を紡ごうと足掻くも、なかなか許されない。


「ハァ…」
「…触っ、て、んむ、くれない、ん、です、か…?」
「…悪い子だな。」
「んぅ」
「…ここを…、何処だと思ってるんだ?」



妄想したままの言葉。
自ら追い討ちをかけたばかりに、下半身は余計疼く。
しかし、俺はここで急ブレーキをかけた。
ここではダメだ。止まらなくなる。
じっくりと彼女を堪能したい。


「誰かに、見られるかもしれない…。」
「…っ」
「誰かに声を、聞かれるかもしれない…。それだけは、許せない…。」


タイミング良く、廊下を走る音が聞こえた。
グラウンドで部活動中の生徒の声も。
さっきから聞こえていたはずの声や音が、今になって耳につく。


「…いいか?明後日の宴が終わった後、君とグリムに客間を用意しておく。」
「はい。」
「深夜0時になったら、俺の部屋に来い。」



ジャミル先輩の目は、欲情していた。
それを必死に抑え込もうとしている目を。
それを誤魔化すように、私の首筋にガブリと噛み付いた。
今までスキンシップを重ねてきて、人の目につくようなところに印をつけられた事はなかった。


「…それまで、待っててくれ。」


ぽんぽんと、頭を撫でられる。
私は叫び出したい気持ちを必死に抑えた。 
その後すぐに、ジャミル先輩はスカラビア寮生からの連絡を受け、俺が行ったほうが早いと寮へ帰宅してしまった。
1人残された私は、奥の熱をどうにもすることも出来ないまま、ヨロヨロとオンボロ寮へ帰った。
誰もいない部屋で、布団に潜り込んで枕に顔を埋めてようやく叫ぶ事が出来た。

そしてすぐに宴の日はやってきた。
私とグリムの他にもたくさんの参加者がスカラビア寮に集まっていた。
見知った顔もわりと参加していたし、宴は楽しかった。あっという間にお開きになってしまった。
ジャミル先輩をたまにカリム先輩の側で見かけたり、来客に挨拶していたり、厨房の様子を見たりと、忙しく立ち回り、声をかけられる雰囲気ではなかった。
挨拶回りで少し話した時、わかっているだろうなと言いたげな視線をいただいたくらいだった。

だから、深夜0時。
これから何をするのか、わかった上で行く彼の部屋。 
これはさすがにふざけていられないなと、ムードをぶちこわす事はやめようと誓いながら、ドアをノックした。
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