駄文@

□ジャミ監C
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「リベンジしたい。」
「何をですか?」
(耳元でヒソヒソ)


お昼休み、快晴の下ベンチでお弁当を食べていると、ジャミルは唐突に真顔でそう言った。
ちなみに二人はお弁当を作って持っていき、交換して食べている。
監督生は飲みかけていたお茶を吹き出すのを何とか耐えた。


「もっとじっくり見たい。」
「ジャミル先輩、だんだん遠慮がなくなってきましたね!」
「遠慮なんかしてられるか。何で俺達は月に一度しか出来ないんだ…。」


今回も安定のご無沙汰となっております。


「ユウだって忙しすぎる。バイトは減らせないのか?」


監督生ユウが、この世界にやってきて、まずやらなきゃならなかった事は、マドルを稼ぐ事だった。
生きていくだけで、お金はかかる。ないよりあるに越した事がないのがお金だ。
グリムに協力を得る期待は早々に捨てて、養う方向へ切り替えた。アテにならない。
しかしグリムは、監督生が養わなければ飯にありつけない訳じゃない上、監督生が稼いだ金で無断でツナ缶を爆買いしたりする。グリムはこういう時だけ、俺とお前の仲じゃねぇかと肉球を押しつけてくるのだ。
おかげさまで、働かない男と同棲しているような、旦那のモラハラに耐え忍ぶ妻のような気持ちを理解できた。
素直にムカつくので、たまに強制モフモフ地獄を執行する事で許してるあたり、彼女からはダメンズホイホイの素質を感じる。
彼女は収入の為に、月曜から土曜までバイトを入れていた。
大体22時までの労働だが、場所によっては残業もある。
学園長から支給される分は、あくまで最低必要限。衣食は自分で何とかするしかない。
彼女はスッとシビアな顔になる。


「生活がかかってるので、出来たら維持したいですね…。」
「…それなら、俺にも考えがある。」 
「???」
「土曜日はモストロラウンジだったな?」
「はい。」
「アズールに土曜日を休めないか聞いてみてくれ。スカラビアで厨房の手伝いをしてもらう。」
「…お賃金は如何程ですか?」
「詳しくはカリムに話してからになるな…。とりあえず土曜を開けておいてくれ。」
「了解しました!」


元気いっぱいに返事をした監督生だが、オクタヴィネルのあの3人組が、それを快く了承する姿を想像出来なかった。
今日はちょうどバイトの日だったため、少し早めにモストロラウンジへ向かった。
 

「すみません、アズール先輩。ちょっとシフトの件でご相談が。」
「どうしましたか?」
「すみません、土曜日なんですけど、ちょっとシフトから外してもらえませんか?」
「ハァ???小エビちゃん、土曜日めっっちゃ忙しいの、わかってるよね???」 


フロイドのお言葉はごもっともなのだ。
土曜夜のモストロラウンジは監督生にとって、はっきり言って地獄の忙しさだった。
明らかに人手不足だが、アズールからは、回せるようにシフトを組んでいるし、実際にそれで回っているじゃないですかと、ブラック企業ではありがちな回答を頂いている。
回っているのではない。回さざるを得ないだけである。せめてあと1人、出来たら2人は欲しいところだ。
おかげで土曜日にシフトがよく一緒になるオクタヴィネル寮生達と、不満という名の絆が深まり、謎の連帯感が生まれている。
学園内のみならず、学園外の集客もあり、売上げは絶好調でアズールも御機嫌である。


「わかってます…。ほんっっとうにすみません。」
「理由を…、納得出来る理由を仰って下さい。」


笑顔で恐怖を与える事に定評のあるジェイド。
色んな意味でとっても言いづらい。
しかし、新しい仕事を始めるのは真実だ。


「…ですよねー、うー、あー、実は…」
「何ですか?」
「スカラビアの厨房で、バイトさせていだだけることになりましてぇ…」
「…スカラビア、ですか…」


途端にアズールの顔が曇る。
スカラビア寮の厨房で働くとなれば、雇用主はカリムだ。
モストロの給料に比べれば高額になる事は聞かずとも明らか。
圧倒的にモストロの条件が不利だ。
交渉に置いて揺さぶりをかけられる何かはないか、アズールがそう考えた時、フロイドが


「つーかそれさぁ、ウミヘビくんが言い出したんじゃねぇの〜?」
「はい。ジャミル先輩から、紹介してもらいました。」
「小エビちゃんさぁ、ウミヘビくんとつきあってんの??」


2人が交際を開始してから、面と向かって聞いてきた人は、後にも先にもフロイドが初めてだった。
そう言えば、ジャミルとは部活が一緒だ。
何か聞いていても不思議ではないが、ジャミルがフロイドに言うとは思えない。
もし言っていたら確実に同じ部活のエースの耳にも入る。あいつが知れば絶対にからかってくる。だがまだエースはその話題を振ってきたことすらない。
フロイドがそういう能力でも隠し持ってるのかと、震えていると


「あ、詳しく説明した方がいい?ジェイドがデリケートな問題って言ってたケド〜。」


なるほど。
デリケートな問題ときたか、と。
それはそれで恥ずかしい予感しかしない監督生は、さらに震え爆発しそうになりながら
  


「……はい。付き合ってます…。」 


消え入りそうな声で、あっさり肯定した。
アズールは再度瞳に輝きを取り戻した。  
これだ!と。
しかし再度フロイドが


「やっぱりぃ、小エビちゃん趣味わる〜。てかウミヘビくん、それ絶対泊まり狙ってるじゃ〜ん。次の日までイチャイチャするためじゃ〜ん。」
「そんなまさかブフォwwwwwwwww」
「アズール草生えすぎぃ」
「呼吸困難になりかける程、笑ってますねぇ。」
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