駄文@

□ジャミ監G
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スカラビアモブだらけの小話



9月12日、早朝5時。
本日のスカラビア寮生朝食係の仕事はハードだった。
まずは昨夜のパーティの後片付け。
そしてこれからの朝食の準備。
いつもなら現場を指示する為に、誰よりも早く起きて働いているはずの副寮長の姿はない。
本日は副寮長の誕生日だ。
前日の内に盛大なパーティ(主にカリムと監督生のせい。)をしたのだ。
当日はゆっくりしていただく為に。
日頃の疲れを癒していただく為に。
朝食係達も副寮長に直接、お誕生日なのだから、明日は本当にゆっくり休んでいてくださいと、何もしないで大丈夫ですからねと、しっかり伝えていた。
そして何より、副寮長は監督生とお付き合いをしているのだから、2人きりでお誕生日をお楽しみいただければ尚良い。
副寮長の同室者も気を利かせ友達の部屋に逃げ、浴室にも24時以降は立入禁止。監督生が泊まる空き部屋には、数人がかりで防音魔法も施した。全ては心置きなく休んでいただくために。
しかし副寮長は現場に姿を現した。
上半身は裸で下にサルエルパンツを履いただけの彼が、真っ白なシーツで全身くまなく包まれた、恐らく監督生であろうものを抱えて。
朝食係達はザワつく。
否が応でも昨夜のお楽しみを匂わせ、いや、見せつけて、それでも現場のチェックをこなす副寮長に、誰もが何も言えずに狼狽るしか出来ない。

「これはこのまま煮込んでいい。風呂に入って上がったら、また確認する。」
「ふ、副寮長。その、監督生?は…、大丈夫、なんですか…?」

1人の命知らずが耐えきれず違和感でしかない現状に触れた。
朝食係達の反応は様々。あいつ死ぬ気かよと思う者、ナイスブッ込み!と親指を突き出したい者、言わせんなよと呆れ顔の者。
副寮長は、ただ口元だけで笑う。

「あぁ、少しだけ…」

慈しむように、シーツの隙間から見える監督生の顔を見つめて

「やり過ぎた。」

そう呟いて意味深に笑う副寮長は、寮生達に確定された事後の衝撃波を浴びせ、厨房を後にした。
残された寮生達は

「馬ッ鹿、おまえ!死ぬ気か!」
「だって!おれには!たえられなかった!」
「気持ちはわかる。ツッコミ所しかねーもん。よくやった。お前は勇者だ。」
「…副寮長、浮かれまくっていたな…。」
「浮かれもするだろ。朝までコースだぞ。監督生が意識を手放すまで。きっとついさっきまで寝ないでお楽しみだったんだぞ。」
「自分の身嗜みも放置だったな、あの副寮長が…。」
「幸せそうで何よりですよ!」
「お赤飯でも炊きましょうかね!」

この事後事件を、監督生が知る事はない。
むしろ知らないままでいた方が幸せだろう。
その日の朝食係担当だった者達の中では、この事件が伝説となり、噂はあっという間にスカラビア寮生皆が知る事になるのも、時間はかからなかった。
それを寮長が今尚知らずにいる事が、スカラビア寮生達の熟慮と統制の光る所か。
副寮長の為の絶対黙秘令が素晴らしすぎる件については、諸説、派閥などがある為ここでは控えさせていただく。
この、事後事件が伝説化してしまったのも、その後にちゃんと理由があった。
風呂から出て戻ってきた副寮長は、先程までの事後とは打って変わって通常運転だった。
身嗜みも完璧。先程の事後は夢か幻だったのでは?と疑う程だった。

「よし、大体いいな。今日は休みだから、後は各自自由にしてくれ。」
「はいっ。」
「…副寮長も少し休んでください。」
「仮眠は取るが、それどころではないからな…。」
「何か仕事でも?我々で分担して出来る事ならやりますよ。お誕生日なんですから…」
「あぁ、誕生日は今日だけだ。だから今日は極力、空き部屋には近付かないようにしてくれるか?」
「は」
「カリムの事は頼んであるから心配はない。その他の事は、君達寮生に任せる。連絡はメッセージにしてくれ。以上。」

それだけを告げた副寮長は、早々と監督生が居る空き部屋の方へと向かった。
残された寮生達は

「…あの人は、化物なのか…?」
「朝まで寝ないでコースだったはずだ。まだ終わらないとでも言うのか?」
「彼女が出来たらそうなるの???」
「いやいやいや、さすがにそれは、イチャイチャしたいだけだと思おうぜ。」
「だ、だよな!さすがにな!」
「昼から出かけるかもしれないしな!」
「…一応防音魔法強化しとくか!」

しかしその夜。
夕食担当の寮生達の前に、副寮長はまた事後を纏わせながら現れたのだ。さすがに監督生を抱えてはいなかったが、朝身嗜みを整えたはずなのに、また、半裸で現れたのだ。
その場に運悪く朝食担当だった寮生がいた。
彼の衝撃をどうか察していただきたい。

「これはそのままカリムに出していい。」
「はい。」
「よし、後は頼む。」

副寮長が厨房から去れば、残された寮生達は

「…信じられるか?今朝の方が酷かったんだぜ…。」
「…ちょっと何言ってんのかわかんない。」
「今朝も事後で、今も事後ってこと?」
「今朝は監督生をシーツに包んで抱えながら指示してた。」
「あっ、俺その副寮長見たわ。風呂場に向かってた。夢かと思った。」
「つか、昼に部屋から出たの見たか?」
「俺、昼過ぎに防音魔法強化しに行ったけど、ドアに違う魔法かかってて察した。」
「という事は…。」
「…副寮長の性欲、やばくないか?」
「絶倫にも程がないか…?」
「監督生は果たして生きているだろうか。」
「そう言えばグリムの姿を見ないな。」
「グリムなら朝飯食った後ハーツラビュルに行くってはしゃいでたぞ。」
「可愛いかよ。」
「今ほどグリムに邪魔してもらいたい気持ちが強いのは俺だけか?」
「監督生の身体の方が心配だな。是非邪魔してほしいな。」
「誕生日が終わるまで、あと六時間か…。」
「監督生、死ぬなよ…!」
「頑張れ、監督生超頑張れ…!」
 



尚、監督生が無事オンボロ寮に帰宅出来たのは13日の早朝だった。






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