駄文@

□ジャミ監F
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「ジャミル、監督生と付き合ってるのか?」

朝、学校へ向かう途中で、カリムはいきなりジャミルにそう尋ねた。

「…あぁ、付き合ってる。」

監督生とジャミルが交際を始めて、大体3ヶ月は経過していた。
ジャミルはとうとうこの日が来たかと、観念するような気持ちで肯定した。

「そっか!オレ、応援するからな!」
「……それだけか?」
「他に何かするか?あっ、宴か!」
「するな、しなくていい、頼むからやめてくれ。その宴の準備をするのすら嫌だ。」
「オレはそのくらい嬉しいけどな!」

ジャミルにカリムの真意などわからない。
言葉通りに受け取る事にした。
余計な事は考えない事にした。
それが心を平穏に保つ術だった。
そしてその日の放課後、メインストリート。
カリムと監督生はそこで待ち合わせていた。

「もう3ヶ月も何も言わないんだぞ、ジャミル!もう我慢出来なくて聞いちまった!」
「言いづらかったんですよ。」

監督生は今のカリムの言葉でそれを知った。
お昼一緒に食べた時、ジャミルは何も言っていなかった。
二人は像にもたれながら、隣り合わせに話し始める。
監督生はジャミルとお付き合いをする事になって一番にカリムに報告していた。
監督生にとってカリムは、最大のライバルだと思っているからだ。

「カリム先輩が私の事好きだったらって考えたら、余計言えないかもですね。」
「おう!オレ、監督生のこと好きだぜ。友達だしな!」
「…私は嫌いです。」
「何で監督生までジャミルみたいな事言うんだ???」
「だったら、いい加減、私にジャミル先輩を下さいよ。」
「それはダメだ!監督生もウチに来る以外は許さないからな!」

と、いうわけである。
あなたの所のバイパー先輩とお付き合いしてます。なので卒業したら私に下さいよと、監督生はカリムにそう言ってしまったのだ。
カリムは、ジャミルも監督生もアジーム家に連れて帰るからと却下した。
この不毛な終わらないやりとりを、今でも続けている。

「カリム先輩、そもそも私は異世界から来てるわけですよ。帰る方法を今でも探してます。出来たら行き来できる方法を。」
「ウチに居たってできるだろ?」
「こんな怪しさ100%な奴、秒で殺されませんか?」
「大丈夫だ!オレもジャミルもお前を守るから!それに監督生は強いから大丈夫だ!」
「頭突きで死は回避出来ませんから!」
「アハハ!」
「笑えねーすわ。」
「監督生やっぱり面白いな。絶対に連れて帰るからな!」
「お断りします。」

カリムの頭が、監督生の肩にもたれ掛かる。
カリムとの距離感もすっかりバグってしまっている。
こんな所をジャミルが見たら

「ずいぶん仲がいいんだな。」

どう思うだろうか。
そんな矢先に目の前に現れれば、監督生の心臓は縮み上がる。
ジャミル・気配遮断スキルEX・バイパーかと、アサシンクラスですかと、星は4つかなと思うしかない。

「おっ、ジャミル!」
「カリム、探したぞ。」
「どうしたんだ?」
「クルーウェル先生が探していた。」
「あっ!忘れてた!行かねーと!またな!監督生!」

慌ただしくカリムは去っていく。
残された監督生とジャミル。
監督生はカリムとこうして話をしている事をジャミルに話していなかった。
毎回待ち合わせて話していたわけでもない。
しかし内容的に話しづらかった為秘密になってしまった。
言えるわけがない。
本人に、お前をくれと言っていたなど、言えるわけがない。
カリムならジャミルに話していそうだなと思っていたが、何も言っていなかったようだ。
後ろめたさのあまり、ジャミルの顔が見れない監督生は俯く。
しかしジャミルはそっと監督生を抱きしめた。

「…ユウはカリムの事が嫌いだと思ってた。」
「…嫌いですよ。仲良しですけど。」
「いつからそんなに仲良くしていたんだ。」
「ジャミル先輩とお付き合いして、一番にカリム先輩にご報告しました。」
「……そんなに前からか。」
「ジャミル先輩が話してくれるまで待つって、言ってましたよ。」 
「……まぁ、あいつにしてはもった方か。」
「でしょう?」
「…たけど、これは浮気だと思うんだが。」
「いえ、決してそんな事はありません。2人でお話してただけです。」
「2人きりになるな。」
「そこかー、はい、わかりました。」
「…いや、わかっていない。」
「わかりましたよ?もう2人きりになりませんから。だからお顔を見せて下さい。」
「…嫌だ。」
「私が1番好きなお顔を見せて下さいよ。」
「…顔だけか。」
「性悪は自覚されてない…?」
「それも含めて好きなんじゃないのか?」 
「大好きです。」
 

その日はそれ以上何も言わなかったが、その日からジャミルの様子が変わってしまった。
人目を憚らずイチャイチャするようになってしまったのだ。
廊下ですれ違えば抱きついたりキスしたり、宴に参加すれば空き時間に囚われて、お前の席はここだとお膝の上から逃れられなくなるくらいの有様だ。

「ジャミル先輩。」
「ん?」
「私が最近まわりに何て言われてるか、知っていますか?」
「何て言われているんだ?」
「バイパーの女です。」
「真実だろう。」
「あとスカラビアの情婦とも。」
「誰だ?そんな事を言ったのは。」
「エースですね。」
「……覚えておこう。」

ちなみにここは、スカラビア寮の調理室。
ジャミルは監督生の後ろから抱きついている。
本日の調理担当のスカラビア寮生数名は、この色んな意味で笑ってはいけない空間に、色んな意味で震えている。

「いい加減離れて下さいよ。」
「もう少し。」
「邪魔です。」
「あと少し。」
「給料分きちんと働きたいです。」
「…じゃあ、後で」
「はい!」
「ちゃんと俺の部屋に来いよ。」
「今そういう事言わないで下さる?」
「逃げるなよ。」
「言わないで下さい。」
「今日はバックでシたい。」
「言うなっつってんのに!!!!」

スカラビア寮生の腹筋が死にかけた所に、調理担当ではないスカラビア寮生が調理室に駆け込んできた。

「副寮長!寮長が魔法の絨毯に乗って猛スピードで南西方向遥か彼方に!!」
「クソッ、あの馬鹿!!」
「もう目視不可能です!」
「今行く!!」

ジャミルが慌ただしく出て行った事で、静まり返る調理室。

「ジャミル・バグッターに改名した?」
「監督生もうやめてwwww」
「監督生本当に勘弁してwwww」
「監督生お腹痛いwwww」

ジャミルは監督生を口説く勢いで甘くイチャついてくるが、監督生は乗らずふざけ倒す。
副寮長の手前、笑えないスカラビア寮生達はそんな2人のやりとりを、監督生の返しに期待を寄せるまでになっていたが、副寮長は知らない。

監督生にはジャミルのバグに心当たりがあった。
カリムと仲良くしてる事がわかってからのバグだ。原因は恐らくソレだろう。ソレを境に彼は独占欲の鬼と化した。
監督生はカリムがただ憎たらしかった。
ジャミルの情緒をここまでめちゃくちゃにしてしまうのだから。

「公私はきちんと分けるべきだと思うんですよね。」
「見せつけてやればいい。」
「…私はバイパーの女なので、ジャミル先輩しか見えてませんよ?」
「スカラビアの情婦なんだろう?」
「やめてくださいよ。絶対に嫌ですよ。私はバイパーの女です。」
「…カリムを選んだら、お前を殺して俺も死ぬ。」
「クソ重メンヘラ女ですか?」
「マジで病みそうだ。」
「バイパーの女を信用出来ませんか?」
「…させてくれ。」
「はい、時間はかかりそうですが」
「…こっちも。」

ジャミルは監督生の首筋にキスをした。

「…ここで、シたい。」

ちなみに、ここは2人がよくお世話になっている、いい感じに人気のない空き教室である。彼女は机に、彼は椅子に座っていた。
今は立ち上がって彼女の首筋に吸い付いているが。

「…こ、ここ、で…?」

ジャミルは答えない。首筋に顔を埋めたまま、離れないどころかチュッチュし始める。

「で、でも誰か来るかも…」
「防音も気配感知も万全だ。」

そんな雰囲気になったこともあった。しかしあの時は寸止めでしなかった。
今回はしっかり魔法を使っていらっしゃる。
彼の本気度がよく伝わる。しかし監督生はまだ足掻く。

「そ、掃除が行き届いてないような」
「机は除菌シートで拭いた。」
「あ、あああ、汗をかいたので、せめてお風呂に…」

しかしジャミルはこれでも諦めない。
耳朶に噛み付いてそのまま耳元で囁く。

「舐めて綺麗にしてやる。」
「ヒェ」
「…焦らすな。」

唇を唇で塞がれてしまえば、もう何も言えない。
彼の長い舌が口内へとにゅるりと入り込み、彼女の舌へ巻き付く。吸われて食まれて甘噛みされて唇で舌を扱かれて、キスだけで気持ち良くなっていく。
彼の手はキスをしていてもしっかりお仕事を忘れず、彼女のネクタイを解き、シャツのボタンを開いていく。
今日監督生は寝坊した。そのため胸の膨らみを抑える装備を忘れて、寝る時用のカップ付きキャミソールをそのまま着ていた。制服が大きめだから然程わからない。
彼はそれもめくり上げて胸へ触れていく。片方の手はベルトを外して、ジッパーを下ろして、下着の底へ指を這わす。
止まるどころかエスカレートしていく彼はもう止められない。彼女は諦めて彼の背中に腕を回す。
彼の指は下着の底をなぞる。彼女の弱点を探り当て、そこを重点的に責める。
口内、乳首、クリトリスの三点責めに、彼女は何も考えられないほどの快感に襲われる。
防音魔法を施したからと言って、下手に声を出すのも忍びない、このスリル溢れる状況は、快感を上乗せする効果でもあるのか。
キスが終わらないのが都合がいいやら悪いやら。逃れたくても離れない。それなのに彼の指は乳首を指先で擦り、クリトリスを捏ねるのを止めない。それどころか、指は下着の中へ直に

「〜〜っ」

触れるとぐちゃぐちゃだ。彼は器用に親指でクリトリスを押しつぶしながら、中へ指を入れていく。
彼女はそれで軽く達した。膣の中がひくひくと収縮する。彼の指はもっと奥へと潜る。
なか、なかもイッちゃう、だめ、そう言いたいのに言えない。瞳を開けば彼と目が合う。瞳に映るはお前の主だ。耐えられずまた瞳を閉じる。
机の上に座っていた彼女は自重を支えきれず、彼に寄りかかる。背中にしがみつく。そのまま中でもイッてしまう。ガクガクと身体は勝手に震える。
何故彼はこんなに気持ちいい事ばかりするんだろうか。彼女はなにも返せないのが悔しくて、そろそろと手を彼の下半身へ伸ばす。
硬く膨らんだソレを優しく形を確かめるように撫でる。そこでやっと唇が離れた。

「…最後までして、いいのか?」
「っ、最初、から…っ、その、つもりじゃ、」
「さすがに、ここではな。」
「ん、うそつき…っ、」
「欲しいか?」

尋ねれば、答えよ。ただし望む言葉以外は受け付けない。
彼女は答えないまま、彼のベルトを外していく。彼は彼女の手を掴む。

「駄目だ。」
「私ばっかり、…不公平、です。」
「答えてくれ。」
「言わなくても、わかる、でしょう?」
「言って欲しい。」
「…嫌、です…、私も、ジャミル先輩を、気持ちよく、させて下さい…。」
「……汚い、から…。」

顔を赤らめてそう呟く彼の破壊力の強さは、監督生の胸をキュンキュンさせる。
むしろまだ中に指を入れたままにして何を言っているのか。彼女はあえてこう言った。

「綺麗に舐めてあげますね。」
「…クソっ」

まさか同じセリフで返り討ちになるとは思わなかった彼は、悔しくも嬉しかった。
やっと中に入れた指を抜いて、自らベルトを外してジッパーを下げて、少しズラして勃起したモノを晒す。
彼女は彼がそうするように、彼の目を見つめながら口付ける。
彼の身体が揺れる。ハァ、と悩ましい吐息が漏れる。もっと、余裕のない彼を見てみたい。その一心で口内へ含もうとした、その時

「おーい、お前、ジャミル先輩見なかったかー!!!」

誰かのクソデカボイスが響き渡った。
しかもジャミルを探している様子。
気配感知に引っかからなかったという事は、すぐ近くまで来ているのだろう。
このままここに押し入られるのも時間の問題。それは避けたいジャミルは、勃起したモノを無理矢理ズボンに戻し、扉へ向かう。
開き外を確認すると、どうやらクソデカボイスの主はスカラビアの寮生のようだった。廊下の角にいる生徒を呼び止めていたようだ。
不機嫌を露わにしていた彼は副寮長。スカラビアの寮生は把握している。
取って付けたようにわざとらしく笑顔を浮かべて

「…俺に、何か用か?」

何事も無かった、とは言えない姿で尋ねた。

「ひ、ひゃい、これを、カリム寮長から渡すようにと…。」

すっかり震え上がってしまったスカラビア寮生は、持っていた紙袋をジャミルに差し出す。

「カリムが?…あぁ、わざわざすまなかったな、ありがとう。」

素早く扉を閉める。
ジャミルは大きなため息をつく。
間接的とは言え、とてもいい所をカリムに邪魔をされたような気がする。

「ジャミル、先輩…?」

振り返り、彼女のもとへ戻る。
まだ色っぽい顔をしてくれている事に救いを感じる。
受け取った紙袋の中には細長い箱が入っていた。包装紙を開いて中身を取り出す。
蜂蜜色の液体が入った瓶。だけど蓋に施されているハートの細工がお高そうに見える。

「香水、ですか?」
「…アジーム家御用達御愛用の品だ。」

監督生は嫌な予感しかしなかった。
まだ具体的にどのようなモノか聞いてないのに、アジーム家の御用達で御愛用のモノと聞いて、一気に良からぬものではないかと疑ってしまうのは何故か。偏見である。

「あっ、そろそろバイトに行く時間です。(棒読み)」
「見逃してやる、が」
「が?」
「覚えておけよ。」
「…忘れたい…!いますぐに…!」



バイパーの女になったが最後、逃れそうにない。
御用達御愛用のモノについてはまた後日。






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