駄文A

□触手にまつわるエトセトラ
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それは何がキッカケだったのか。
何もわからないまま、今、学園は触手に蝕まれていた。
至る所から湧き出て粘液を吐き出す触手はあっという間に学園中に広がった。
詳しい生態も不明の謎の触手。
魔法に弱く攻撃すれば消えて無くなる。
初日こそ大騒動になり授業どころじゃなく駆除に勤しんだが、2日目には落ち着きを取り戻した。
さすがは名門NRCと言ったところか。
学園や各寮を蝕んだ触手は3日目には姿すら見せなくなっていた。

それは、何故か?

この学園に一人だけ、触手が好物とするモノがいたからである。
それは、雌。女である。
最初は異様にターゲットに懐く程度だった触手たちは、匂いに気付き、捉え、離さなくなったのだ。
今、触手はオンボロ寮を拠点としている。

異変をいち早く知らせたのは勿論グリムである。
放課後、エースとデュースと共に職員室へ向かい、クルーウェルに報告した。

「子分が、ユウが触手に捕まっちまったんだゾ!!」
「僕らもオンボロ寮に行ったんですけど、触手だらけで中に入れなかったんです!」
「しかもあいつら魔法で攻撃しても消えないんすよ!すぐ復活するんすよ!」

クルーウェルは頭を抱えた。
そして瞬時に理解した。
触手が何を好み何を糧に強くなるのか。

「good boys、よくわかった。学園長には俺から伝える。仔犬共はオンボロ寮に近寄るな。いいな?」

そしてクルーウェルから事情を聞いた学園長は同じく頭を抱えた。
囚われの監督生が女の子である事は、学園長をはじめ、教師陣は把握している。
男子校であるからこそ、身を守るためにも性別を隠し、男子として彼女は過ごしてきた。
まさかこんな事になるとは、一体誰が予想出来ただろうか。

「恐らく、監督生から摂取して力を得ている。学園内や各寮に湧いた触手共は魔法で消滅したが、オンボロ寮に住まう触手共は消えないとの事だ。」
「各寮の寮長達に応援を頼みたい所ですが、まぁ恐らく中で行われているのは成人指定でしょう。監督生さんのプライバシーも保護しませんとね、えぇ、私優しいので。」

オンボロ寮の前に立つ、学園長、クルーウェル、トレイン、バルガス。

「これも恐らくだが、魔法を相殺していると見ていい。」
「ふっ、触手共、この俺の筋肉をとくと喰らえ!!」

4人がいざ乗り込もうとしたその時

「待って下さい!」
「学園長、先生方、僕達も力をお貸しいたします!その暁には!」
「コイツら全部駆除すりゃいいんだろ?」

各寮寮長と副寮長、そして各寮から寮生を数名(いつものメンツ)を引き連れ現れたのである。

クルーウェルは呆れ、学園長はぱんぱんと手を叩きながら

「はいはーい!皆さん!お疲れ様でした!撤収してくださぁい!」
「bud boys共!必要ない!帰れ!!」

追い返す教師陣に

「何を隠してやがる。」

レオナは不敵に笑う。

「ここまで来りゃもうわかりきってる話だろ。チッ、雌臭くてかなわねぇ。」
「…ちなみに、貴方はどこまでご存知ですか?」
「あ?あいつが女だって事はここにいる全員が知ってるだろ。」
「ならば余計にお帰り下さい。いいですか?ハッキリ申し上げますけど、この中で行われているのは恐らく成人指定です。キングスカラーくんはともかく、18歳未満お断り領域です。ここまで言えば中で何が起きているのか、思春期の皆さんならお分かりいただけますよね?」

あー…と把握するもの、?を浮かべるもの、反応は様々だ。

「監督生さんのプライバシー保護も、私の役目ですので。」

そう、学園長が笑顔を浮かべたその時。
パァン!!と割れた窓から触手が飛び出した。
その後を追うようにして現れたのは、怒りの形相のディアソムニア寮長、マレウスだった。
グリムの次に異変を嗅ぎつけたマレウスは、すぐさまオンボロ寮に侵入した。
しかし待ち受ける触手達はマレウスの魔力をもってしても、消滅する事はなかったのだ。

「マレウス、深追いするな。」
「チッ…」

リリア、シルバー、セベクもその窓から出てきた。

「お、クローリー、遅かったの。しかしなかなか難儀な触手じゃな。もうダメかもしれぬぞ?」
「リリア様!中にいるはずの人間が見つかりません!!」
「今日で3日目じゃし取り込まれた可能性の方が高いかもしれんのぅ。」
「っ、監督生!!ユウーっ!!!」

デュースの声が虚しく響く。

「手段は選んでいられないという訳ですね。わかりました。ならば、火を放ちましょう!」
「触手は火に弱いという道理が通るなら、可能性はあるだろう。」
「皆さん!ではご協力下さい!火魔法を一斉にオンボロ寮に向かって放ってくださーい!」

躊躇なく一斉に放たれる炎の魔法。
オンボロ寮はあっという間に火に包まれていく。
中に潜む触手にもすぐ変化が現れた。
出入り口が開き大量の触手が逃げ出し、燃え尽きていく。
そして大体片付いたかと思われた頃合いに、最大級の触手が現れた。
その触手は火に包まれる事はなく、身を守るように絶えず粘液を溢れ出させていた。
その中心部に

「いたんだゾ!ユウーっ!!!」

監督生の顔半分が見えた。
心臓の位置。触手はまるでそれが核であるように、大切そうに守っている。
一同は仕留めろとばかりに攻撃する。
しかし触手は、何故か監督生を守ろうとする。
それを好機とばかりに、ヴィランズは攻撃を緩めない。

「ユウ!!起きるんだゾーっ!!」

グリムの悲痛な声に、監督生は目を開く。
混濁する意識、把握しきれない現状、生温い感触。
ああ、触手の中って結構居心地いいんだなと緊張感のない感想も飛び出す。
触手が弱ってきてるのか、身動きひとつ取れなかった監督生の体が動けるようになっていた。
粘液には女性のみに効く催淫効果があり、正気が欠片程しか保てないが、抗う力はまだ残されていた。
身体をゆっくり外へ出すと、触手の動きが止まる。
触手の顔は顔とは到底呼べない口のような形状だ。小さな歯と粘液だらけの触手には目というものがない。
でもきっと、これは顔だろうと監督生には思えたから、そっとその中心部に唇を近付けた。
恐らく正気じゃないからこその行動だったのかもしれない。
監督生が口付けると口内に触手が侵入し、粘液を飲ませていく。
しかし触手は、まるでそれが嬉しいというように、しゅわしゅわと縮んで消えていった。
ドサリとその場に落とされる監督生。
幸いにも監督生は、乱れはあるものの、溶かされる事はなく制服を着ていた。

「ユウーーーっ!」

しかし監督生の側に、グリム以外の者は近付けなかった。
女性の体を介した粘液は、強烈なフェロモンとなって男性を魅了する効果に変わっていたのだ。

「み、皆さん…、早く、早く帰宅して下さい…!撤収です…!」

例外なく等しく、ここにいる全ての男がそのフェロモンに当てられていた。
学園長ですら教師たちすら、むせ返るフェロモンに圧倒されていた。

「ユウはなおるのか???」

グリムの悲痛な声に、グッと下唇を噛み締めたクルーウェルが監督生に近寄る。
症状を見なければわからない。
粘液を調べないと、毒性や依存性の有無、体内への悪影響。
監督生は粘液だらけでぬるぬるのぐちゃぐちゃだ。
女生徒に触れていいものか?良いも悪いも粘液を見ないと、彼女の容態を確認しなければ。理性を奮い立たせながら監督生に向かい合う。

「仔犬、触るぞ。」

クルーウェルが尋ねると、監督生はうっすらと瞳を開いた。

「せ、んせ…、おね、がい、しま…っ、さわ、ら、ない…っ、で、」
「…大丈夫だ。粘液の成分を調べるだけだ。」
「いま、ぁ…っ、さわ、った、らぁ…っ」
「ッ」

危なかった。触ったらどうなるんだ?言ってみろ仔犬!と危うく口から滑りかけた。
クルーウェルはコートで監督生を隠しながら、そっと頬に触れた。

「ッーーーー〜!!!」

ねちょりとした粘液を指ですくっただけ。
それだけで監督生は身体を抱きしめビクビクと震えた。

「失礼。」

クルーウェルの隣にトレインが近付き、監督生に断ってから魔法を使い汚れを綺麗にした。
そして

「お眠りなさい。」

学園長は監督生を魔法で眠らせた。
秒で眠りについた監督生をバルガスが抱き上げ

「一先ず保健室ですかね?」
「そうしましょう。」

腰を抜かし動けなくなる生徒達に、学園長はニッコリと微笑んで

「皆さん、お疲れ様でした。撤収です!速やかに帰宅してくださいね!」

その場を後にした。
取り残された生徒達は、あまりの刺激の強さに、誰一人口を開く事なく帰宅していった。
ただ一人タブレット参加だったイデアだけは、こんな二次元展開リアルで起こり得るんすなぁと、終始アニメ観戦するオタクだった事を追記しておこう。
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