Amestris
□赤き咎人
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青い空、白い雲、文句の言いようのない快晴の中、ヴァレーラの町は祭りの最中でにぎわっていた。露店が立ち並び、人の笑い声や話し声が絶えない。
「すごく賑やかだな」
そんな町に二人の旅人が現れた。
金髪を三つ編みにした少年はエドワード・エルリック。大きな鎧姿をしているのはアルフォンス・エルリックである。
エドは人の間を歩きながら祭りの様子を見渡す。
「町全体がこの祭りでにぎわってるんだな」
「そうだね。…あ、兄さん」
アルは大きな体で必死に人の間をくぐっていくと、ある露店を指差した。
「…金魚すくい?」
エドは怪訝そうな顔をしてアルを見る。
「やりたいのか?」
アルはこくんと頷いてエドの返事を期待する。が、エドはその期待を見事に裏切った。
「だーめ! すくってどうすんだよ? 飼えないだろ? 全く、それでなくとも最近まで猫騒動で…」
にゃ〜〜〜。
「…あは」
「あはじゃねぇだろうがぁぁぁ! アル、鎧ン中見せろ!!」
「だって、だって、見捨てたくなかったんだもん! かわいそうでしょう!?」
「かわいそうもひったくれもねぇ! 飼えないもんは飼えないんだ!!」
エドはアルの胴の部分を開こうとするが、それを必死にアルが開けさせまいと抵抗する。その時、ポケットに入っていた銀時計が落ちた。とはいえ、チェーンで繋がれているのでエドは特に何も気にしない。それよかアルの胴を開けるほうに神経がいっていた。
しかし、急に誰かの手がエドの肩に置かれたので、エドは少し不機嫌そうに振り返る。
「んだよ、今はお取り込み中…」
「君、錬金術師だね?」
「…は?」
「それ、銀時計だろ?」
そこにいたのは一人の男性で、エドの銀時計を指さしてきた。エドはまだ不機嫌そうな声で男性に尋ねる。
「あぁ? それがどうかし…ぅわっ」
「祭りの行事に参加してくれよ! あ、国家錬金術師っていうのは駄目かもしれないから、それはひかえてね」
「はぁっ!?」
エドは突然の事で、まだ内容も分からない行事参加というのを断ろうとするが、男性は大声で周りの人にいう。
「一人、錬金術師見つけたぞ!! 当日参加だ!!」
「ちょっ…アル! 何とかしてくれ!!」
「そ、そう言われても…」
「ん? 何だ。君も錬金術師なのか?」
男性は首をかしげてアルにせまった。アルは戸惑いながらも、断るために嘘をつこうとする。
「いえ、僕は…」
「そーなんですよー! こいつ錬金術師で、是非その祭行事に出たいって言ってるんです!」
「えぇ!?」
無論、横から首を突っ込んできてそう言ったのはエドである。
「そうだったのか! それならそうと、早く言ってくれればいいのに。当日参加、二人目だぞー!」
男性がずいずいと人ごみの中を進んでいきながらそう言った。すると、町の人達は拍手喝采で二人と男性の道をあける。その道を歩いていき、急に止まると男性は二人を前にして背中を思いっきり押した。
「さ、がんばってくれよー!」
男性はそういうと大声を上げて笑いながら人ごみの中へと消えていった。
二人が出た場所は広場らしく、その広場を大勢の人が囲んでいた。その広場にはエド・アルを合わせ、たくさんの人がその場に立っている。
すぐにイベントのスタッフらしき人が来て、札を渡してきた。番号プレートで、渡された番号は14番と15番だった。エドは14番を、アルは15番のプレートを付ける。
エドは近くにいた、7番プレートの少年に聞いた。
「なあ、この行事っていうのは一体何なんだ?」
「は? お前、内容も分からないでここにいるのか? …ああ、そういやさっき、当日参加者がなんたらこーたらって言ってたな。それって、お前等の事か?」
「ああ」
「なるほどな。仕方ね、俺が教えてやらあ。俺はリオ」
「俺はエドワード。こっちがアルフォンスだ」
「ふーん。芸人が参加なんて、前代未聞だな」
「芸人じゃないんだ、僕達、ただの旅人だよ」
間違えられるのはいつもの事である。アルは特に気にも止めず訂正した。
「このイベントの参加対象は錬金術師。錬金術師ならどの年代でも参加可能だ」
「錬金術師のイベント?」
「じゃあ、お前も錬金術師なのか?」
リオは得意げに胸を張る。
「そうさ。このイベントに優勝して、優勝賞品を貰うんだ!!」
「優勝賞品?」
アルが首をかしげるのを見て、リオは大きくため息をついた。
「はあ? それでさえ知らないのか。優勝賞品は…」
リオがそこまで言うと、周りに置かれたスピーカーから声が流れてきた。
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