Shamballa


□屋上
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 屋上は好きだ。



 一番空に近い場所で、この青い風景を邪魔するものがない。向こうの地平線から、反対側の地平線まで、全ての空を見渡す事ができる。
 この時だけ、全てが僕一人のもののような気になる。


 それに、この季節・このご時世じゃ、暖のある部屋からわざわざここに出向いてくる人はいない。風は冷たいし、外は危険だ。


 このピリピリとした国関係の中、いつ銃撃されたって、爆弾を投げられたって不思議じゃない。この空も、数分後には黒煙に覆われているかも知れない。

 そんな事になれば、建物の中にいたって関係ない。でも、周りを固めて安全だと思いたい。





 皆、死ぬ事が恐ろしいんだ。





 もちろん、僕だって平気なわけじゃない。でも、それでも、今はこの空を独り占めしたい気分なんだ。



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