Shamballa
□屋上
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ここに通い始めてから、どれくらいだろう。
古ぼけたベンチも、今となってはソファみたいな存在になっている。横に寝転がると、キィと軋む音がして心地いい。
休憩時間になる度ここに来るけど、これほど人が来ない場所だとは思わなかった。案外、穴場っていうのは目の前にあるものなんだろうな。
なんて考えてるそばから、鉄の扉が開く重い音がした。すっかりくつろいでいた僕は、慌てて体を起こし座り直した。
まさか、ここに僕以外の人が来るとは。だらしのない所を見られたくなかったんだけど、少し遅かっただろうか。
寝ぼけてかすむ目を擦る前に、招かれざる客の容姿が映された。
金髪の、きれいな長い髪だった。
僕も金髪だけど、ちょっと違う。あんなに太陽が似合う金髪は、見たことが無い。ドイツ人ではないのかもしれない。
もう一度目を開いてみると、どこにも客はいなかった。いつの間に、僕の隣に座っている。ちょっと距離をおいて。
ちらりと見てみると、その客は背もたれに寄りかかって空を仰いでいた。遠めではっきりしていなかったとはいえ、女性かと判断した数秒前の自分が恥かしくなった。
それにしても……見たこと無い顔だ。ここにいる、ということは、研究所の人なんだろうけど……。
客の目が、空から僕へ。そのきれいな金色の瞳と目が合った。横目で観察していたつもりだったけど、知らない間に凝視してたみたいだ。
「あっ」
文句の一つでも言われるだろうか。少し冷や汗が出てきた。
だけど、客はふいっと視線を元に戻すだけで、何もいわない。逆に気まずい雰囲気になった気がする。この様子からすると、気まずくなったのは僕だけのような気がするけど。
あぁ、今日は変な日だ。
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