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【恋せよ乙女!〜絳攸編〜】
よし、そろそろだ。
太陽が中天を通る時、書翰を持ったあの人が…吏部から出てくるはず。
吏部へと続く回廊の最初の曲がり角。
いつもと同じように壁を背にして身体を隠した。
今は昼休み。
周りに人がいなくなる時間だ。
袖に入れていた手鏡をこっそり出して自分を映した。
鏡にはいつもより色鮮やかな唇が顔に映えている。
いつもは薄桃色の紅(べに)をのせていた私。
昨日、思い切って赤色の紅を買ってみた。
(気づいてくれると嬉しいな…)
ギィ…と吏部の扉が開く音を聞き、慌てて手鏡をしまって脇に挟んでいた書物を持つ。
そして、ゆっくりと来た道を歩き出した。
すると…―――。
「あっ…お、おい!」
少し慌てたような声が背後からかかる。
一拍置いて振り返った。
「李侍郎…」
私はすぐさま廊下の脇に寄り、頭を下げた。
「頭を上げてくれ。お前、今日も府庫に行くのか?」
ゆっくりと頭を上げ、微笑みながら答えた。
「はい。李侍郎も府庫へ?」
「あぁ。主上の元へ書翰を届けてから府庫に行くのだが…。あー…その…だな…」
「また、ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?あ…もちろん、李侍郎がよければ、ですが…」
「構わない。行くぞ!」
顔を赤くした李侍郎の隣に並んで回廊を歩き出した。
貴方と少しでも話していたい。
貴方の瞳に長く映っていたい。
貴方の記憶の片隅に小さくとも私が残っていてほしい。
だから私は…―――。
きっかけが欲しくて待ち伏せを
(あぁ、一日で最も幸せなこの時間…)
お題配布元:瞑目
「そういえば今日のお前の唇…」
「えっ?!」(ドキドキ)
「イチゴでも食べたのか?」
「…………はい?」
「子供じゃないんだ。口元くらい拭いておけ」
「…………。」
きっと、天然?鈍感?な所も含めて絳攸が好きなんです…。
因みにヒロインは吏部の下っ端官吏設定。
なので勿論、絳攸との面識はあります。