都稀×杏李

□★03
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家に帰ると、迷い無くベットにダイブした。


コンコンっとドアがノックされる。
その直後に響く、安心する声。


「杏?」

「・・・ん?」


兄の珀斗がドアに背を任せて立っていた。
ゆっくり枕から顔を上げる。


「言ったのか?」

「・・・ん」


思い出しただけで泣きそうになる。


「都稀さ、びっくりしてた。」

「だろうな。」


軽く笑いながら、珀斗の声が近くで聞こえて、ベットが軽く沈んだ。

そして優しい手が頭をなでてくれる。


「…それでさ…ちょっと怒ってた。」

「・・・・・」


珀斗は何も言わない。
ただ、頭をなでてくれるだけ。
でも、ちゃんと聞いてくれてるって分ってるから。

話を続ける。


「なんで・・・怒ったんだろ・・・ね」


いいのかよって叫んだ都稀の声が頭から離れない。


「・・・黙ってたからかなあ?」


それは違うと、頭のどこかでいってるのに、それが認められない。

認めたら、期待しちゃいそうで。
今の関係が崩れそうで。

こわい。

1歩進む…その先が、怖い。


「どうしてだろうね・・・」


吐き出すように小さく叫んだ杏李の頭をなでながら、珀斗は目を閉じた。


「・・・なんでだろうな」




届かなかった指先

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