short

□あじさい。
1ページ/2ページ

―― 降れよ〜降ってくれよ〜
雨乞いの呪文ってあったっけ?まぁ、気分はあれだ。祈祷師の気分だ。ただ違うのは、村の農作物のためでなく、自分のために祈っているだけだけれど。

帰りまであと一時間。
その短時間のうちに、そりゃぁもうにっちもさっちも傘なしじゃぁいれないくらいに降ればいい。

むんっ、と空を睨み上げていたら、後頭部が小気味良い" パコン "という音をたてた。
恐る恐る振り替えれば担任がいた。

「渡辺お前何してんだそんな窓にへばりついて。怪しいな」
「…っ怪しくなんかっっ」

言い返そうとしたら、クラスメートが笑っているのに気づく。
呑気に田村まで笑っている。
いいさいいさ。笑っているがいいさ。とにかく雨よ降ってくれ。

さっき、田村たち男子の側を通った際に、「俺傘忘れちゃったんだよね〜」と言う声を聞いたのだ。
「うっそ田村お前マジで??」
「今日は降るって絶対」
「降らないこと信じることにしたんだ俺は」
「あ〜ぁバカだこいつマジでバカだ」
「バカだバカだとは思っていたけどまさかここまでとはねぇ」
そんな会話を聞いて私は内心にやりとした。
今日は私は2本傘を持っている。一つは折り畳みで、もう一つ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ