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□そうやって君まで決めつけるの? (仮)
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「ほんっとに、信じられない」
横で愚痴をこぼす友人の横でわたしは、彼とすれ違うときにフワッと香る爽やかな風を思いだしていた。
「 だからやめとけば。って言ったのに 」
そう言ってため息を吐けば、ユカリは、だって。と口を尖らせた。
街で、学校で、駅で。
会う度に違う女の子を連れている軽い男。
ハヤトはそういう男だ。
女の子の頼みは断れないから。という最もらしい言い訳をして、特定の人をもたず誰とでもキスをするような、そんな男。
クラスの何人かも、ハヤトとキスをした。と言う。
わかっていてユカリは一緒に遊んで、そしていつも嫉妬している。
いい加減、付き合いきれない。
ユカリに悟られない程度にまたため息を吐いた。
「 狩野さんおはよ〜 」
「 …おはようございます 」
元気なハヤトに馬鹿丁寧に挨拶して、そっとため息をつく。
ここんところ、何を思いついたのかハヤトが何かと絡んでくるようになった。
ハヤトとは、ユカリのこともあるしあまり関わりたくないのだけど。
昼になれば、やたらとニコニコとして寄ってくる。
帰りもニコニコしてついてくることがある。
朝は教室に入るなり寄ってきて挨拶して、挨拶を返すと満足気に集団の中へ戻っていく。
最近、ため息を吐くことが多くなっている気がする。ため息の数だけ幸せが逃げるのなら、わたしは今どのくらい不幸なんだろう。
ハヤトが何かと構ってくるようになってから、クラスの女子からの視線が鋭い気がする。
こうなったら徹底的に避けることにした。
4限目終了のチャイムが鳴ると同時に、柏木ハヤトは思いきり伸びをした。
最近一緒に遊ぶようになったユカリと目があって少しニコッとしてから、狩野葵の方へ手を振ってそっちへ向かう。
すると顔を強張らせた狩野がじりっと後ずさりした気がした。
まさか。
一瞬の間の後、狩野は脱兎のごとく教室を飛び出し、ほぼ同時にハヤトも走り出した。