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□傘ひとつ
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いつもの下校中。
二人並んで歩いている。
夕方から今にも泣き出しそうだった空がとうとう堰を切ったように雨粒を落としてきた。
周囲の戸惑いの声。
走って目的地へ急ぐ者、軒先に雨宿りする者、構わず歩き続ける者。
二人そろって空を見上げ、泣きだした空から逃れるようにシャッターの閉まった軒先へと走った。
「降りだしたな、おまえ傘は?」
ごそごそと鞄の中を探しているが目当てのものは見つからない。
「机の中のようだ」
しまったなと言う顔のルキアに一護は笑いかける。
「ほれ、一つあれば十分だろ。くっつけよ、狭いから」
折りたたみ式の傘を広げ、ルキアを招き入れる。
一人で使っていても肩先が濡れてしまうような代物のため、二人で使用するにはいささか無理があった。
数十mも歩かないうちに雨に濡らさないようにという気遣いをお互いがしているため二人とも濡れている。
「ルキア、もっとこっちこいって」
「そんなことをしたら貴様が濡れてしまうではないか。貴様の傘なのだ、もっと貴様が濡れぬように使え」
「傘持ってる俺がおまえに濡れてほしくないの。いいから使え!」
「いやだ。……私は走って帰る」
「んなことさせるか」
がしっと腕を掴み今にも飛び出しそうなルキアを阻む。