Z

□青空の下で
1ページ/3ページ




「朽木さんって可愛いよな。なんていうか守ってあげたくなるかんじ」

「そーそー、どっか儚いんだよな。抱きしめたら壊しちまいそう」


耳に飛び込んできたのは俺と深く関わる人物の名前で、胸に苛立ちがふつふつと湧いてきた。

気にしていない風を装ってそこを離れる。

それでも十分彼らに声が届くところから大声で名を呼んだ。

気づいたルキアがぱたぱたと軽い足音とともにやってくる。


「どうした?」

「…あー、何か飲むか?」


別に用があったわけではなく、ただ単に見せつけたかっただけなんだ。

俺とルキアの仲を。

苦々しい「げ、黒崎」という声が耳に届く。

ルキアはまったく気づいていないようで、うれしそうに俺の手を掴み歩きはじめた。

その手を解いて、指を絡ませるようにつなぎなおすと照れたようだ。

恥ずかしげに頬を染めてはいるが絡めた手が振りほどかれることはない。

そんな姿にただただいとおしさでいっぱいになる。



自販機コーナーには誰もいなかった。

ルキアと俺の二人だけ。


「いちごみるくがいい」

「はいはい。おまえ好きだよなあ」


自惚れじゃないと思う。

“イチゴミルク”は“一護”とつながっているって。

ルキアが好みそうな甘い飲み物は他にもある。

その中で“イチゴミルク”を選ぶのは俺と同じ名だから。


「好きだぞ」


ふふふと軽やかに笑ったルキアが宣言通りにイチゴミルクの選ぶ。

取り出したイチゴミルクのパックを俺に渡すのはストローをさしてくれということ。

自分でもできるけど、俺に渡したのは甘えたいってことだろうか?

角を持ち、ストローをさすとルキアは瞳をキラキラと輝かせた。

両手でそうっと受け取ったルキアが自販機の隣にあるベンチへと腰を掛けた。

ゆっくりと味わうように飲んでいる。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ