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□遠くない未来に
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黒崎家・リビング
「いいなあ、温泉」
「えー、ちょっと年寄りくさいよ遊子」
「そんなことはないぞ、夏梨。私も温泉に行きたい」
「おまえ、かなりいい齢だろ」
すかさず、一護にはルキアの一撃が容赦なく繰り出された。
鳩尾に入った拳に一護が座り込んで耐えていると夏梨が呆れた顔で一護を見ていた。
今日の夕食後の黒崎家の団欒はテレビでの旅番組。
有名な温泉地に有名人が行き、観光をして温泉に入って美味しいものを食べるというシンプルな番組だ。
主に食いついているのがルキアと遊子の二人、一護と夏梨はその二人の発言にツッコミを入れていた。
「そうだ!」
何かを思いついたらしい遊子がぱあっと顔を輝かせてルキアの手を握った。
「みんなで旅行に行こうよ!あたし、お姉ちゃんと一緒に温泉巡りしたい」
「無理だろ、突然」
却下された遊子がおもいきり膨れたため夏梨は手助けに入る。
「あたしもどっか行きたい。一泊が無理なら日帰りでも行けるとこ探せばいいんだし。家族で行きたいなー」
“家族”を強調した夏梨はじっと兄を見つめた。
その隣ではうるうるとした瞳の遊子がいる。
ルキアと言えば、戸惑ったような困ったような表情。
「俺に決定権はねえ。親父に聞けば?」
その言葉に双子は一心の書斎へと駆け出した。
黒崎家の中で一番イベント好きな一心が旅行を却下することはなく、むしろ大騒ぎしそうだと一護は判断して溜め息をついた。
これでしばらくの間はどこがいいだの、いつにするだのと騒がしくなるに違いない。
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