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□わがままな人
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「一護」
「ん?」
「安静にしているのではなかったのか?」
「もう痛みもねえから平気だって。おっ、うまそう」
蓋が開けられ、匂いが漂う。
鍋の中でコトコトと煮込んでいるものの匂い。
少しずつ、少しずつ染みこんでいく。
「味見は駄目だ」
「やだ」
小皿に取り分けた鍋の具をぱくりと一護が食べた。
「んまい。ほら、ルキアも」
促されて渋々口を開く。
咀嚼して、嚥下する。
「まだ煮込みが足りぬな」
「そうか?十分美味いけど」
「まだだ」
「じゃあ、こっちを先にいただきます」
「待て、一護。貴様、まさか…」
髪に、額に、頬に降りる唇。
「ルキアはいつもうまい」
にんまりと笑って慌てる私を楽しんでみている。
せっかくここまで上手く出来たのだ。
貴様に構って焦がしたら、
どうなるか覚悟しておれ。
(終)