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□可愛い彼
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「ひゃあう」
「あったけー」
「ばっ、莫迦者!なんだその冷たい手は。離せ、離さんか」
逃れようと身体をひねっても一護の手は私を離さない。
隣で吐かれた溜め息は石田のもので、その眼は「いったい何を考えているんだ、黒崎」あたりだろう。
そういう石田も両手を井上に包まれて喜んでいるようだが。
「ほら、これであたたまれ」
手にしていた“かいろ”を一護に渡そうとしてもいらないと首が振られる。
「やだよ、それ嫌い」
「嫌いとはなんだ。ぬくぬくにあったまれる快適ぐっずではないか」
「手、つなげねーもん。おまえ最近部屋ん中でもそれに夢中だろ」
「まったく…かわいいな一護」
呆れると同時にいとおしくなってそう言葉にすれば、一護はますます機嫌悪そうに眉間にシワを寄せた。
「可愛いってなんだよ、かっこいいとか言えよ」
その時、また声が届いた。
後輩の声。
「あんな風にか?きゃー、黒崎くんかっこー」
「そうじゃねえっての」
むむっとまた眉を寄せている。
「しかたなかろう、一護はかっこいいより可愛いが似合うのだから」
「だから、可愛いとか言われてもまったく、ぜんぜんうれしくねえの!おまえわかってて言ってんだろ」
「そう思うのならば私がかっこいいと思う一護を見せてみろ。そうしたらちゃんとかっこいいと言ってやる」
腕組みをして、仁王立ちでそう宣言すると、一護はなんともいえない顔をしてから情けなさそうに小声で何事かつぶやいた。
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