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□あたたかな部屋と
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寝返りをうとうとして、でもできなかった。
理由はわかっている。
体温をわかちあった相手。
隣に居てくれないと、俺が俺であることができなくなる人。
まだ夢の中の彼女は小さな呼吸を繰り返している。
あどけない寝顔に癒される。
無性に抱きしめたくなって、背中に回している腕に力をこめた。
首筋に息がかかってくすぐったい。
くすくすと笑う気配がして、「おはよう」と聞こえた。
「ハヨ」
そう言ったけどまだこのままでいたい。
だから抱きしめた腕はそのままに、彼女を少しだけ引き上げた。
頬同士をくっつけて笑いあう。
穏やかな時間に浸る。
ああ、こうして過ごす時間はいいな。
世界に二人だけみたいだ。
ルキアと俺と。
足りないものなんて何もない。
満ち足りている。
満ちた月のように。
「ルキア」
「ふふ、なんだ」
ささやくように名を呼べば、ころころと笑う。
「好き、だぞー」
「私も好きだぞ」
起きたくないな。
ベッドの中でもう少しこうしていよう。
(終)