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□黒い世界
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「井上は浦原たちと一緒にいてくれ。浦原、くれぐれも一護の手を離すなよ」
「はいはーい、黒崎サンと井上サンのことはお任せくださ〜い」
場の緊張感をまるで無視した浦原がいつものようにへらりと笑う。
彼の隣に立つテッサイがしっかりと一護をはがいじめにしていた。
「…るき…あ」
何とかして身体の自由を取り戻そうと一護はもがくがいつものように身体を動かせず、一護は眼差しだけでルキアに訴えた。
しかしそれを許すルキアではなく、今目の前の脅威へと向かって行ってしまった。
「朽木さん…石田くん、茶渡くん」
祈るように井上が三人の名を呼び、胸の前で手を組む。
「井上、案ずるな。いざとなれば儂が出る」
「そうっスよ。それにあんな雑魚に遅れをとる三人じゃあない」
夜一と浦原の言葉を意識して大きく息を吸った井上から幾分力が抜けた。
自分の役目は信じて待つことだと。
そして傷ついた身体を癒すのだと。
突然現れた破面。
藍染たちとの戦いが終わったあとでも重霊地である空座町は度々狙われている。
害なすものと戦うのは死神代行・黒崎一護をはじめ、朽木ルキア、石田雨竜、茶渡泰寅であり、彼らの傷を癒すのは井上織姫であった。
いつも最前線に立つ一護は今日、不本意ながらもテッサイに動きを奪われていた。
見ているだけということができなくて、自分の手で護りたくて、でも身体がいうことをきかない。
「はな、してくれ…。俺も…」
「ダメっスよお〜。黒崎サンは大人しくしていてください。じゃないとアタシが朽木サンに怒られちゃうじゃないですか。それにアナタは任せることを覚えた方がいいっスよ」
へらりと笑っていた眼が鋭く一護を射抜く。
その真剣な眼に気圧されてうつむいた一護に夜一が声をかけた。
「ほれ一護。ルキアが始解したぞ。尸魂界一美しい刀じゃ、見ておけ」
心配するな、焦れるなと言うように響いた声に顔をあげて一護は彼女たちの戦いを見守った。
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