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□甘すぎ
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「ほら、これ着ろ」
「ん」
そろそろ屋上の昼もきつくなってきた。
それでもここに来てしまうのは習慣というよりは、着てもらいたいからだ。
何度言っても薄着の人物に。
隣でいそいそとカーディガンを着るルキアは妙にうれしそうだ。
「ふふ」
「何笑ってんだよ」
「なんでもないぞ。早く食べよう」
早々に皆リタイヤしているから今は二人だけ。
啓吾たちは教室で食べているのだろう。
「ルキア、これ何?」
「たこさんういんなーに決まっておろう。他に何に見えるというのだ」
タコには、なんだか申し訳ない出来になっているが、本人がタコだというのならタコなのだろう。
見た目はアレでも味はいい。
こういう細工とか苦手だもんな。
「うまい」
「工夫したからな。あ、はやく卵焼きを食べてみろ。今日のは会心の出来だ」
ぱくりと黄色のそれを口に運ぶ。
数度咀嚼して飲み込む。
文句なしにうまい。
会心の出来ということだけはある。
やや甘めで、焦げていない。
「どうだ?」
「すげーうまい。明日も食いたい」
「……努力、する」
どうやら会得まではいっていないらしい。
頭をくしゃりとまぜると難しい表情をしていたのが緩んだ。
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