Y

□りんご味
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「熱は?」

「微熱程度だ」


どこか調子が悪そうだと思ったのは何もないところでこいつがつまづいたから。

夕食の準備をはじめようとするから無理やりベッドに押し込んだ。


「じゃあ、寝てろ」

「何を言う。この程度なんでもないわ」

「明日、あいつら帰ってきた時に今より悪くなってたら心配するぞ」


「それでもいいのか」と言えば、「それはダメだ」と言う。

押入れから毛布を一枚取り出してルキアに掛ける。


「今日は大人しくしてろよ」

「むう…。起きていてはダメか?せっかく二人きりなのに」

「ダメだ。風邪はひきはじめが肝心って言うだろ」


わかってはいるようだけど、寝て過ごすのはもったいないとでも思っているらしい。

俺にとってはそう思ってくれているだけで十分うれしい。

そりゃ、二人きりだからいろいろしたいけど。


「どこに行くのだ?」


立ち上がった俺にルキアが不安そうに問いかける。


「夕食つくってくる」


ものすごーく簡単なものぐらいしか作れないが。

何も食べさせないで寝かせるのもまずいだろう。


「やだ。行くな」


何がそんなに不安なのか。

さっきまではいつもの気丈なルキアだったのに。

弱々しくつかまれた手を握り返して、もう片手で頬に触れる。

擦りよってきたルキアを甘やかしたくなる。


「一分で戻る」


そう言い置いて階下へと走った。


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