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□ホットミルク
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「ただいまー」
二人分の声がして「おかえり」と返す。
今日は一段と冷えて最高気温も真冬並だと天気予報でも言っていた。
そのまま二人はいつものように部屋に籠ろうとするから遊子が引き止めてる。
「はーい、手を洗ってうがいをしてきて下さーい」
ルキ姉は楽しそうに返事をして洗面所に向かったよう。
一兄はちょっと眉間にシワを寄せて、それでも従っている。
間もなく洗面所からぎゃいぎゃいと騒がしい声。
たぶん、ルキ姉が手を洗っているところに一兄が後ろから手を伸ばして邪魔してるとかだと思う。
小学生かと思うほど幼稚なことをしていても二人は楽しそうだから困る。
リビングに戻ってきた二人の服が若干濡れている。
普通に手を洗ってできるような濡れ方じゃない。
はあ……。
水かけの攻防をしていたのか。
まったく、あたしらより子ども…。
「どーぞ」
ことんと二人の前にマグカップを置いた遊子は「ホットミルクだよ」と言ってキッチンに戻った。
喜んだルキ姉が両手でマグカップを持ち上げようとして、でもすぐに放した。
口をへの字に曲げて、マグカップを睨んでる。
熱かったんだ。
冷たい手だから余計に。
あ、一兄がにやけてる。
横目で隣に座るルキ姉を眺めて笑ってる。
ルキ姉に見つからないようにこっそりと。
あーあ、見てらんない。
だから、買い物に行くっていう遊子にあたしはついていった。
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