Y

□手の届く範囲で
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「ルキアっ」


思いついたことを口にしようとして振り返ってもそこにルキアはいなかった。

伸ばした手は空を掴む。

いつもの場所にルキアがいない。

喧嘩してるんだった。

たぶん原因はささいなことだったと思う。

もう、最初のきっかけがなんだったかは覚えていない。

ただひどく怒らせて、いつもならこもる押入れにさえ目もくれず、部屋から出ていった。

だんだんと冷静になる頭の中で、ひどくルキアを求めていた。

顔をあわせたら喧嘩になるかも知れないけど、手を伸ばしてルキアがいないのは嫌だ。

仲直り、しよう。



「ルキア、いるだろ」


妹たちの部屋をノックして声をかけると、わずかに開いて夏梨が顔を出した。


「ルキ姉は顔合わせたくないって」

「悪いけど、ルキアと二人にしてくれるか?」

「遊子、行くよ」

「え、でも夏梨ちゃん」

「いいから…一兄、早く仲直りしてよね」

「ああ」


心配そうな遊子と、いい加減にしろとでも言うような顔の夏梨を見送って足を踏み入れる。


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