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□視線の先
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授業中、こっそりとルキアを見つめるのが日課になった。
見つからないように、こっそりと。
ノートに書き込む姿は背を伸ばしてきりりとしている。
苦手な数学や英語の時はどこか小難しい顔をして授業を受けているんだ。
最初のうちは。
わからないなりに頑張って理解しようとしているのだが、授業の半ばを過ぎてくると集中力が切れている。
ノートに落書きをはじめそっちに夢中。
睫毛が伏せられて一所懸命に描いている。
たまに満足なのができると、ひとりでノートをまじまじと見ながら笑む。
ノート一面に描かれているのはもちろん上手いのか下手なのか判断しがたいウサギもどき。
ウサギのほかに義兄のつくったキャラクター・わかめ大使も仲間入りしている。
ウサギとわかめ大使は手をつないで楽しそうだ。
たぶんルキアと白哉。
ルキアが月一の定期報告であっちに戻ると必ず泊まってくる。
出掛ける前には夕方には戻ると言って出ていくのに。
俺の携帯が夕飯前ぐらいに鳴って「明日帰る」って言うんだ。
で、帰ってくると白哉とどこそこに出掛けただの、食事をしただのをそれはもううれしそうに話す。
俺はルキアに甘えたくているのに気づきもしないんだ、いつも。
仲が悪いよりは良い方がいいけど、ルキアが喜んでいるのは俺にとっても喜びだけど、なんかいろいろ耐えられない。
だからいつも白哉のことを話すその口を塞ぐ。
俺のことを見つめたほしいから“俺だけ”を見るように仕向ける。
“俺”を求めさせる。
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