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□おもひで
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それを見つけたのはたまたま以外の何者でもない。


遊子と二人で部屋の片づけをしていた。

ちょうど季節の変わり目。

来るべき季節に合わせて服やら何やらを入れ替える。

衣装ケースの上にのっていた箱に気づかなくて取り出したときに中身をばら撒いてしまった。

床に広がったのは写真。

ここの、黒崎家の記憶のカタチ。

一枚一枚手に取ってみる。

様々な表情をした一護、遊子、夏梨…。

彼らは幼く、けれど泣いて笑って楽しそうだった。


昔の一護は泣き虫だったとおじ様がおっしゃっていた。

今にも泣き声が聞こえてきそうな写真。

泣いている一護の頭をなでている、やわらかく笑った女性が真咲殿。



「お姉ちゃーん、見つかった?」

「すまぬ、まだ…」


室内に入ってきた遊子が感嘆の声を上げる。


「わあ、お母さんの写真〜。お兄ちゃん泣いてる、あっ、こっちはあたしと夏梨ちゃん!!」


嬉しそうに手にとっている。


「遊子、これはどーすんの?って何やってんの?」


夏梨もまた室内で遊子ときゃっきゃっと楽しそうに写真をみている。

集まるときは集まるもので一護とおじ様も騒ぎを聞きつけやってくる。

やがて四人はそれぞれが写真を手にとり、これはいつのだとか、その時何があったとかを懐かしそうに話している。

ただ話を聞いてるだけでも楽しかった。

なのにずるいと思ってしまった。

過去を戻すことはできないのに。

自分が知らない過去があって当たり前なのに…。
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