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□ありがとう
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初めて彼を目にした時正直驚いた。
あまりにも喪った部下に似ていたから。
そんな彼が彼女を救い出した。
彼がいなければ彼女も喪われていたかもしれない。
彼女にとっても俺にとっても尸魂界にとってもかけがえのない存在。
彼がいなければこの平和は訪れなかった。
今、定期報告に来た二人が目の前で戯れている。
いつもはかしこまった物言いしかしない彼女が晴れやかに笑う。
笑うことすら、泣くことすらやめて感情を長い間殺していたのをどうすることもできずに俺たちはいたのに。
たったひとりの存在に救われたのだ。
おそらく何の肩書きも必要としない、彼女そのものを受け入れた彼に。
嬉しく思う。
しあわせを願う。
あの小さな身体にいくつもの痛みを抱えている彼女を癒すのは彼しかいない。
他の誰であってもそれをなすことは難しい。
兄の白哉でも、幼馴染みの阿散井くんでも、上司の俺でもない。
死神代行で、オレンジ髪をして、彼女の現世での居候先の彼しか。
彼らは気づいていない。
否、視界に入っていないのかもしれない。
お互いのことしか。
多数の視線を受けていることを。
彼は背をかがませて、彼女は彼をみつめて、こつりと額同士がくっつく。
きっと彼に日頃刻まれている眉間のシワはゆるんでいるのだろう。
やわらかな眼差しでみつめて、彼女を両腕で周りから隠すように抱きしめる。