V

□どこが? ルキアver.
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黒崎家のリビングには娘三人。

椅子に座って遊子が焼いたクッキーでおやつタイム。

バタークッキー、チョコチップクッキー、ココアクッキー……。

形も様々で丸や四角やウサギ……。

男二人は外出中で、珍しくそんな会話に流れていった。



「ルキ姉って一兄のどこがいいの?」

「あたしも聞きたーい」


はい、はーいと元気よく手を挙げ夏梨の言に遊子が賛同してしまう。

ということはこの場で話すしかない。

気の合った双子をかわすことができるのは誰もおらず、逃れようとしても無駄である。

この場で話してしまわないとおそらく大変なことになると本能的に悟ったルキアは意を決して口を開いた。


「どこがと言われても…」

「全部っていうのとわかんないっていうのは却下だから」


今まさに全部だと言おうとしていたルキアは口をぱくぱくとするしかなかった。


「お兄ちゃんってあの眉間でしょ。最初怖くなかった?」


不機嫌そうにしかめられた表情がありありと浮かぶ。

普段がああだから笑うと大分印象が変わり、それは限られた人たちにしか見せない。


「いや、怖くはなかったぞ。あの眉間は固定されたものなのかとは思ったが」


笑いを含んでルキアが言うと双子もつられて笑い出す。


「固定されてるね、特に最近。ルキ姉に近づく者全員に対して」

「うんうん。あたしと夏梨ちゃんでも怖い顔するもんね」


困るよね〜と賛同しあうことに何も言えずにいるルキアは、紅茶を一口すすった。


「あの刺青の人はルキ姉とはどんな関係なの?」


夏梨は先日ルキアに会いに来た恋次のことを思い出して問いかけてみる。

一兄ずっとルキ姉のそば離れなかったし。

その人と一兄が特に仲が悪そうってわけではないけど、何か不穏な空気が流れてた。

やたらと親しげにルキ姉の頭なでたりしてたし。
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