ひより
□ホットミルクなんていかがですか?
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一日が終わり、新しい一日が始まろうとしている。オレはベッドに身体を投げ出して天井を仰いでいた。
あ、もう寝そう。
まどろんでいると扉を三度ほど叩く音がした。オレは眠りの淵から現実に引き戻されて起き上がる。
扉を見つめていると、向こうから「オレだよ、コロンブスだよ」と聞き慣れた声が困ったように言う。オレは急いで扉に向かい開け放った。
「どうしましたか、コロちゃん」
「コロちゃんっていうな!……あのさ、眠れないん、だ」
そらみろ、と正直思った。
「昼間サボって食堂で寝てるからですよ」
今日の昼の食事が終わっても、コロちゃんは出て行く素振りを見せなかった。オレが洗い物を終わらせても気配は消えない。さすがに声を掛けたほうがいいのかと思って振り向いてみると、コロちゃんは机に突っ伏して寝ていた。仕事しろと純粋に思ったけど、こんな展開もあったし放っておいて正解だったようだ。
「サボってない!その……お前が仕事してるかどうかの確認だったの!そしたら疲れて、瞼が重くなってつい……」
弁解のしようがないためか、一緒に持ってきた枕の端をきゅ、と掴んだ。弁解したにしても返す気はない。コロちゃんを扉の向こうへ促した。
「はいはい。とりあえずどうぞ。大したことできませんけど」
「知ってる。コックの部屋、本しかないんだもん」
「すみませんね」
改めて自分の部屋を観察してみると本当に何も無い。あるのは卓上に放ってあるコック帽とハンガーにかけられた制服、娯楽になるものは読みかけの文庫本たちしかなかった。シンプルといえば聞こえはいいが、どちらかというと質素だと思った。
「そう思って、ウノ持ってきたんだ。やろうぜ!」
枕の裏から取り出して、コロちゃんはにっこり笑った。
「……夜通しウノに興じるパターンじゃないですか?あんまりゲームは……」
「う……、かもしれない、けど」
咎められて意気消沈したように眉を垂らすコロちゃん。こういうコロちゃんにはに弱い。オレは溜息をついてベッドの上に座り込んだ。ぽん、とシーツを叩いてみた。
「お互い、明日も朝から仕事ありますからあんまり出来ませんよ」
「……!うん!それでもいい!」
オレの姿を確認するとみるみるうちに目を見開いていって、ぱあ、と笑顔を作るコロちゃんにつられて微笑んだ。あ、可愛い。
「ああ、でもこれじゃあんたいつまで経っても寝ないですから、何か眠たくなりそうなの作ってあげますよ」
「お?何作ってくれんの?」
「そうですね、」
ホットミルクなんていかがですか?
(うわあ、牛乳大好き!)
(その代わり、ウノ3回やったら寝ますからね)
お友達と語りすぎてうはあ、ってなったので書きました。
2009.08.09