駄文(カイルの過去話)

□カイル幼少/レルカー時代3
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「ヴォリガ!おい!いるんだろ!?話がある!!」

夜分に騒々しく訪問者が扉を叩く。

どうやらまたうちの奴らが何かしでかしたな…、いつものことながら頭が痛い。無視してしまいたい。
しかし俺は保護者だ…。仕方ない。

「いるぞ。」

ガチャと扉を開けると凄い形相の男が入ってきた。中年の男はレルカーの町人で顔馴染みである。
しかしいつも穏やかな人物なのだが、今日は別人のようだ。

「カイルはいるか!?」

いきなりヴォリガの横をすり抜けて、家内に踏み込んできた。

「お、おい!ラッセル!!あんた話があるって言ってなかったか?」

奥に進もうとする男を無理やり引き止める。
十中八九カイルが何かをやらかしたのだろうが、いくら何でもこの憤りようはただ事ではない。
一旦落ち着いてもらわねば、とヴォリガは考えた。

「ちょっと待てって、落ち着けって。一旦俺にカイルが何をしたのか説明してくれよ。」

「落ち着けだと!?アイツうちの娘に夜這いかけやがったんだぞ!!これが落ち着いていられるか!?」

「……は?」

カイルがやらかしそうなことといえば喧嘩位しか思いつかなかったのでヴォリガは一瞬頭が真っ白になった。

ヴォリガが呆けている間にラッセルは二階への階段に向かっていた。
我に返って男の腕を掴み、再び引き止める。

「ちょっと待てって!!
カイルはまだ12歳だぞ!!
お前の家の娘15位じゃなかったか?
カイルじゃなくて別の子じゃないか?」

ヴォリガ家にはカイルの他にも孤児院から引き取られてきた少年たちがおり、いずれもカイルより少し年上である。15〜16歳位の悪ガキなら女の子に夜這いをかけるのもありえないことではない、とヴォリガは自分の経験上そう考えた。

「いやカイルだ!俺は見たぞ。娘の部屋の窓から出て行く金髪を。
見間違いなものか。」

「…。」

ヴォリガには返す言葉が見つからなかった。そう、あんな金髪はレルカー中探したってカイル以外にいるはずがない。

「…おい、待てって!」

再びヴォリガが呆けている間に男は2階へ上がってしまっていた。

「おい!カイルはどこだ!!」

「今夜はまだ帰ってきてねーよ。」

「嘘じゃないだろうな!?」

慌てて2階へ上がったヴォリガに子供達と男のやりとりが聞こえてきた。

部屋へ入ると6人いる筈の少年のうち2人がいるだけという状態だった。

『夕食の時には皆いた筈なのに、いつの間に…』

年長の子供達の夜遊びは薄々感じていたのだが、まだ12歳のカイルまで…正直ヴォリガは驚いていた。


「ヴォリガ、二度とうちの娘にカイルを近づけるなよ!!」
家内にカイルが隠れている様子もなく、男はあきらめて、そう言い残して帰っていった。
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