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□春の気配(フェリ+カイ+ガレ)
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太陽宮の中庭の大木の影で一人の少年がまどろんでいる。
そして宮殿の二階よりそれを見下ろす男が二人。
たまたま通りかかった窓辺でフェリドとガレオンは中庭の大木の根本にまどろむカイルを見つけた。
「………。」
ガレオンは難しい顔をして立ちどまった。かたやフェリドは日向ぼっこする猫を見つけた時のように温かい眼差しを向けた。
「…騎士長閣下。」
「何だ?」
最年長のベテラン騎士ガレオンにフェリドは全面的な信頼を寄せているが、しかしやはり厳格な彼のお説教は苦手である。
自分のさっきの緩んだ表情を見られていたか…それともカイルのうたた寝への注意か…とフェリドが考えていると、ガレオンは続けた。
「女王騎士の仕事補佐に加え、勉学、剣・紋章の修練、それに王子殿下の護衛…カイルには少々きついのではないでしょうか?
今までに見習いについた者の業務に比べれば、格段に過密な内容でありますし、修練などもあまり過密に物を教え込んでも一つ一つが身につかぬのではございませんか?」
ガレオンは中庭でうたたねするカイルを叱責したいのではなく、心配している様子であった。
女王騎士を目指すカイルを思いやるガレオンの心遣いにフェリドは嬉しくなった。そしてガレオンから眠り続けるカイルへ視線を戻し、言った。
「桜の花は一つの蕾にたくさんの花を咲かせるそうだ。俺は奴もそういう花ではないかと思っている…
アイツはきっと応えてくれるはずだ。」
「閣下…」
ガレオンの表情からは厳しさは消え、フェリドと一緒に階下の後輩を見守るのだった。
咲き誇る桜の花が見られるのも近い日のことである。
end