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□新女王騎士(フェリカイ)
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なんと美しい女王騎士だろう…
フェリドは再び目を細める。

女王騎士就任式を終え、披露と祝いを兼ねた宴席も終了し、フェリドはカイルを太陽宮の奥庭へ誘い出した。月明かりに照らされたその姿はやはり美しい。輝く金の髪に白磁の肌。夜空のような深い碧い目にひかれた朱によって一段と大人びて見える。

フェリドに少し遅れて奥庭の大木の陰に現れたカイルは今日初めての正女王騎士服に袖を通したのであった。
式典でその見事な騎士ぶりにぽかんと口を開けて見とれる貴族どもの顔を思い出し、フェリドは少し思い出し笑いを浮かべる。

日ごろ「どこの馬の骨とも分からない」とカイルの正女王騎士への就任に苦い顔をしていた貴族の面々の反対を押し切り「女王騎士の戦力が足りない」とフェリドとアルシュタートはカイルを正女王騎士に登用することにした。
庶民の、しかも孤児が女王騎士になるなど前例がない為、元老院の貴族たちに角が立たぬよう不本意ながらも「人手不足」を建前にしたが、もちろん二人ともカイルの実力はすでに女王騎士にふさわしいものと確信していた。

式典で若い騎士は漆黒に金糸の女王騎士服に身を包み、光輝く金髪と飾り襷をなびかせて女王の前に進み出て、恭しく膝まづき誓いの口上を述べた。
今までファレナの民とは異質の外見であると心無い貴族からの陰口をたたかれていた彼の外見は皮肉にも現女王騎士の誰よりも正女王騎士服との美しいコントラストを彩り、見事なものであった。その非の打ち所のない立ち居振る舞いも素晴らしく、誰もがその男の女王騎士への就任を認めたのであった。

フェリドもアルシュタートもカイルの誓いを厳かに迎え、温かい眼差しで見守った。




「フェリド様、にやけながら見つめないで下さいよ。気持ち悪いですー!」
いつの間にかフェリドの前に立ったカイルは昼間の口調はどこへやら、いつもの語尾の延びた口調でフェリドをおちょくった。

「いや、昼間のお前を思い出してたんだ。」

「へ?」

「アーメスとの戦いで連れてきた小さな痩せた野良猫が、こんなに
りっぱに大きくなって…立派な女王騎士になって…いやー嬉しいぞ、我が息子よ。」
上から下までカイルを眺め回し、満足そうにフェリドは何度も頷く。

「もー、何親バカしてるんですか!」
カイルは頬を染めてうろたえた。

「誰もがお前に見とれていたぞ。これほど見事な女王騎士は久しく見たことがない、とアルも古参の者たちも褒め称えていた。」

「そうですか…?オレ、式典までさんざんザハーク殿に、『なっとらん』とか言われまくって襷とかなおされて…すごく緊張してたんですよ…」

「あいつも式典の時はため息をついてお前に見とれていたぞ、気づかなかったか?」

「そんな余裕なかったですよ…。」

少し俯き加減のカイルに気づいたフェリドはカイルの二の腕を引き、抱き寄せた。

「どうした…?」
顎に手を添えてカイルの顔を上げさせフェリドは問うた。

「…フェリド様は…親の立場の欲目は置いておいて、どう思います…?
オレ孤児だし、女王騎士どころか太陽宮にあがるのも反対してる人も多かったし、見習いもまだ2年目で女王騎士になれるのはまだまだ先だと思っていたから…」
奔放なようで実は謙虚な男だ。無理に推挙した俺たちの立場も心配してくれているのだろう…それに昼間の自信に溢れた姿の中にまだまだ歳相応な不安を抱えていたんだな、とフェリドは抱き占める腕
に力をこめた。

「お前な…まだそんなことを…。どこの馬の骨というなら俺もお互い様だし、見習い2年目といってもお前の実力は女王騎士に十分ふさわしい。何よりもアルと俺はお前を必要としている。
これからは俺とアルと子供たちを…それにファレナを守ってくれ。」
フェリドは背に回されたカイルの手にも力がこめられるのを感じた。

「はい!」
その碧い目でカイルはフェリドを真摯に見つめていた。

「これからは、より俺の傍で支えてもらうからな、見習いよりハードになるぞ、覚悟しておけよ!」

「はい!」
二人は見つめあい互いを抱擁する腕に再び力をこめたのだった。

end
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