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□ハロウィン ネタ(フェリカイ)
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僕とカイル二人で抜け出して、久しぶりの探検。今日はカイルの知らない秘密の通路に来た。
入口が開いた途端露骨に嫌がるカイルを無理やり連れ込む。

「王子ー、もう戻りましょー?」

小首を傾げてカイルが僕の顔を覗き込む。

「嫌だ。もう少し奥まで探検するんだ。カイル怖いの?」

「ちっ、違…でもここ寒いんです…。」

カイルは腕組して背中を丸めて付いてくる。確かにここは少し寒いけどカイルは絶対怖がっているのだと思う。
追い打ちをかけてみる。

「そういえばね…ここで昔閉じ込められてた人がたーくさん殺されたんだって…カイル、怖いでしょ?」

「もう、王子そんな話しないで下さいってー!」

成功、カイルは怖がっている!
カイルが太陽宮に来て2年。友達になってずっと仲良くしてきたのに、最近何だか大人ぶっちゃって…一緒に過ごす時間も少なくなってきた。
カイルなんて体は僕より大きいけど、中身は子供とたいして変わらないのに。
今日は思い知らせてやろうと意地悪をしてみることにした。

カイルを太陽宮の秘密の地下牢に連れて行ってあげる。そこは隠し通路の奥にある曰くつきの場所。
昔から多くの人が処刑されたという…。
父さんがこの秘密の通路を教えてくれた時に、
「こっち側に曲がるとお化けが出るらしいからな!近づいちゃいかんぞ!!」
て教えてくれたいかにも不気味な所。

行っちゃダメと言われると行きたくなってしまう。それにカイルを連れて行けば怖がりカイルも苛められて一石二鳥。


大分奥まで歩いてきた。
よっぽど怖いのかいつも僕の前を歩くカイルが僕の後ろを歩いている。護衛としてその姿勢はどうなんだ?とは思うが今はそれがかわいくて仕方がない。

「おうじ〜、本当に戻りましょう?」

なんて情けない声を出しているんだろう。しかも僕の服まで引っ張って。楽しくて仕方がない。

「だーめ!もうちょっと。」

そのまま進むとカイルは僕の服の端を掴んだままついて来る。
こんなので女王騎士になれるの?もう少し見習で僕の傍にいた方がいいんじゃない?

「ほら、歩いて!」

「王子ー!」

服から手を放させて、その手を掴んで前へ進む。そういえば最近カイルと手をつないでなかったな…と思いだした。
昔は良く手をつないで僕を部屋から連れ出してくれたけど、最近はご無沙汰だ。でも、今日は僕がカイルを連れて行くんだ。


その通路の突き当りは牢屋が並んでいた。手近な部屋に入ってみる。
変な臭いがして息苦しい。さずがに僕も不気味に感じる。
でもここで怖がっちゃカイルに僕の強さを見せられない。行くしかない。
さらに進もうと踏み出したその時、

「王子ダメですっ!!」

「!?」

今まで僕の後ろに隠れていたカイルが飛び出して僕の前に覆いかぶさった。
そのとたんバシッという音がして、吹っ飛ばされた。

廊下の奥の壁にぶつかったけど、カイルが庇ってくれたからか、僕はそう痛くはなかった。

「…カイル?」

カイルはまた僕の前に這い出して後ろ手に僕を庇う姿勢だ。

「来るなっ…!」

絞りだすような声でカイルが叫んで、何故か水の紋章を発動させて前方に氷を飛ばした。
でも前には誰もいない…はずだ。

「カイル?何?」

誰もいないのに何してるの?と思ったが、どうみてもカイルの様子が普通じゃない。
顔面蒼白で連続して詠唱をして魔法を繰り出している。何も無い所へ…

さすがに不安になってきた。青ざめたカイルはいつも見たこともない真剣で必死な形相。
背中に貼りつく僕には僕らの周りは悪意でいっぱいのような気がした。この時にはやっと僕はのっぴきならない状況だと気づいた。
息苦しくなってきた。僕には見えないけどきっとカイルにはこの正体が見えているのだろう。
でもカイル大丈夫なの?僕がしがみついているカイルの背中からはどんどん体温がなくなって行く…

「カイル!?」

いきなりカイルの体がビクンと仰け反り、崩れた。

「カイル、カイル!?」

床に崩れ落ちるカイルを僕も必死に支えようとしたけど、カイルは僕には重たくて無理だった。

「カイル!?」

「…王子に…手を出すな…。」

言いながらカイルの顔からどんどん血の気が引いて行く。
その時カイルの肩越しに、カイルに覆いかぶさってくる黒いモノが僕にも見えた。

「ああっ!!」

思わず声をあげた。


「お…じ…逃げ…て…!」
カイルが僕の体を押した。

その凄く恐ろしいモノはカイルの上に乗ったまま僕を見た。
『ツギハオマエダ』というように暗い光が僕を射抜き、僕も動けなくなった。

どうしたら…!?父さん、助けて…!?声も出ないまま僕は必死に念じた。次の瞬間−


カッ…
もの凄い光が部屋に溢れた。

「ファル!!カイル!!」

目の前に必死に願った父さんの姿。光は父さんと一緒にいる宮廷紋章師官発した魔法のようだった。

「父さん!?」

「ファル、大丈夫か!?」

「僕は大丈夫、でもカイルが…。」

「何?!」

父さんは床に倒れているカイルの具合を手早く確かめると肩に担ぎあげた。

「カイルは大丈夫だ。さ、ファルも!」

「え?」

父さんはひょいっと反対側に僕を抱き上げた。

「よし、行こう。」

「はっ、私が後から行きましょう。万一追って来るようでしたら紋章で牽制いたしましょう。」

「うむ。頼むぞ。」

紋章官と手筈を整えた父さんは素早く牢を出た。

父さんはカイルと僕を抱えたまま走る。二人を余裕で運べる父さんの力強さが頼もしいけど、少し羨ましくって、それに悔しい。フクザツ…。

しばらくすると胸の苦しい気配も無くなり、後方の紋章官も光る紋章を使わなくなった。

「父さん、降ろして。歩くよ。」

「ああ、もう大丈夫だろう。」

父さんは僕を下ろしてしゃがみ、カイルを肩から下ろした。

「カイルは大丈夫?」

「ああ、随分体力を消耗しているが、怪我は無いようだし休めば大丈夫だろう。」

父さんがカイルの頭を撫でているのを見て僕の心はチクンと痛む。

「ところで、ファル、あそこは危ないと言っただろう。なんで行ったりしたんだ?
お前たちがしばらく見当たらなくて侍女が探してたところに、紋章官が地下通路の結界を破った者がいると報告してきたから、もしやと思って駆けつけたら案の定だ。
お化けに殺されるかも知れなかったんだぞ?」

「…カイルと冒険したくて…。ごめんなさい。」

「もう行くなよ。お前たちが無事ならそれでいい。」

父さんは僕とカイルをぎゅっと抱きしめた。

「…ぅん…。」

「カイル!!」

僕と父さんは同時に叫んだ。

「あれ…フェリドさま…?」

「大丈夫か、気分は悪くないか?」

父さんがカイルの両頬に手を当てて聞いた。

僕も慌ててカイルの顔を覗き込む。

「カイル、危ない目に合わせてごめん。父さんが助けに来てくれたんだ。」

僕が説明するとカイルは青白い顔をしながらもにっこりとほほ笑んだ。

「オレは大丈夫です。…でもちょっと眠くて力が入らないかな…」

言いながらカイルは目を閉じた。眠ってしまったようだ。
追いついてきた紋章官に回復魔法を使ってもらうとカイルの頬に血色が戻ってきた。

父さんは眠るカイルを横抱きにして抱え直して、僕たちは連れ立って地下通路を脱出した。
僕は侍女の元へ届けられ、カイルはもう少し安静にした方が良いだろうと父さんが連れていった。

『カイルごめん…』

僕は自分の子供っぽい浅はかさを後悔した。
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