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□過去拍手3(フェリカイ)
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「この酒は邪気を払うんだ、さ、飲め。」
秋の二人だけでの月見酒の時には、貴方はそういってファレナでは珍しい菊という花を杯に入れてオレにも勧めた。

「ん、なんか今年は特に月がきれいで風流ですね…?」
フェリド様の膝に上がり、首に腕をからませ、フェリド様へ口移しで酒を呑ませる。

「お前、どんどん色気がまして来るな。末恐ろしいぞ。」
口ではそういうが、フェリド様は無茶苦茶楽しそうにオレの口内に舌を入れて応戦してくる。

月明かりに照らされたフェリド様の浅黒い肌に体が熱くなる。同じようにオレの白い肌にフェリド様は感じてくれているのだろうか…?


饗宴も終わり、衣服を直すオレをフェリド様はなごり惜しそうに見詰めて来る。オレも惹かれない訳ではないが、でもこれ以上は明日に触る。

「来年の月見ではもっと楽しませてあげますよ。」

「では、その約束を楽しみにとっておくか。」


『なーんて言ってたのに…』
今、オレは一人酒を飲む。あの人は愛する妻と一緒にこの世を去った。

「今年の月もきれいですよー。」
菊はどこで手に入れるのか分からなかったので、省略させていただいた。彼のいないこの世で邪気を払って長生きしてもつまんないだろうし…

一人でちびちびと飲んでいると、背後に人の気配がした。
知り合いだったら声をかけてくるだろうし、他人なら面倒臭いのでそのまま無視していた。


気配は無言のままだんだんと近づいてきた。この気配には覚えがある。しかしありえない…。オレは動けなかった。

す、と後ろから抱き締められる。

「約束を果してもらいにきたぞ。」

耳元で囁かれる忘れもしない声、少し痛い髭の感触。

それがどんな存在であろうと、オレには関係無かった。
呪縛が解けたように、オレは振り向いて愛しい人を抱きしめた。


とにかく無我夢中だった。
最後に彼はいつもしていたようにオレの頭を撫でてくれた。
直後オレの意識は落ちて行った。


ふと気がつくとオレは元いた場所に座っていた。
月の位置も変わっておらず、どうやら一瞬の夢を見たようだ。

『夢でもいい。も一度会えたんだから…』

ふと手にしたままだった杯に口をつけようとすると、菊花が浮いている。

「フェリド様…。」

盃の中の菊花と酒に移った月が絡み合い美しい。

『いつまでも愛してます。』

オレは杯に口をつけた。

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