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□クリスマスプレゼント
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その日オレは王宮の中庭で王子と姫さまのお相手をしていたが、突然始まったお願い攻撃に困っていた。
「ね、カイル!雪降らせてよ!!」
「え!?でもオレ、本物の雪ってあんまり見たことないですよ!?上手くできるか分かんないですよー。」
かわいい王子のお願いを聞いてあげたいけど、温かいレルカーに育ったオレは雪が降る所をまだ見たことがない。下手なことして王子たちの夢を壊すのも…と躊躇っていると、
「わらわも見たいのじゃ〜。」
「ひ、ひめさま…。」
じーっとオレを見上げて見つめてくる、さらにかわいい姫さまの様子にオレは陥落した。
「オレ、やってみます!!」
とは言ったものの
「違うよ!カイル!!雪はもっとフワッとしてるんだよ!!」
「うぅ、ではもう一度…。」
なかなか上手く加減ができない。冷たい雨が降った次は、小さな氷が降った。
『んー、こんなかんじ?』
再度挑戦。
「きれいじゃー…」
「カイル、凄いよ!!本物の雪と一緒だ。」
ふわっと雪の結晶がオレの周りに舞っていた。
さっき降らせた氷よりも大きいのに当たっても全然痛くない。柔らかな雪が降って、地面に薄く白く塗り替えていく。
「喜んでいただけて、オレ嬉しいですー!」
お二人のはしゃぐ姿にオレは調子に乗って雪を降らせた。
といってもオレの魔力ではちゃんとした雪の状態で降らせるのはお二人の周りのほんの少しの場所が限界なんだけど、でもなんとか雪を積もらせることはできた。
「雪だるまを作ってみるのじゃ〜。」
「よし、リムやろう!!」
子犬のようにじゃれて雪だるまを作るお二人はホントにかわいい。見とれていると、王子から声がかかる。
「カイルも手伝ってよ!雪だるまの顔にする材料探して!!」
「はーい!!」
オレの集めた小石と小枝で顔と手をつけて、手乗り雪だるまが完成した。
「母上と父上へのクリスマスプレゼントにするのじゃー。」
「いいアイデアだね、そうしよう、リム!!」
「素晴らしいですねー。きっと喜んでいただけますよ。あ、ホラ!」
王宮の窓から陛下とフェリド様が並んでこちらを見ているのに気づき、王子と姫さまに教えてあげる。
「父上ー!!母上ー!!」
嬉しそうに手を振るお子様方に陛下たちも笑顔で手を振ってくる。
「王子、姫さま、今日はご家族揃ってのご夕食でしょ?そろそろ向かわれてはどーですか?」
太陽はもう傾きかけていた。
「そうだね。リム、行こうか。カイル、ありがとうね!」
「ありがとうなのじゃー。」
「雪だるまは涼しい所に置いて下さいねー!!」
お二人を送り出すと、手乗り雪だるまをを王子が持って、お二人は足早に王宮の父母のいる棟へ向かった。背中を見送る。
王宮の入り口には侍女がお二人を待っているのでオレがお供する必要はないだろう。
ふと窓に視線を戻すと、陛下と閣下が寄り添うようにして、優しい眼差しでオレを見ていた。
窓辺のお二人へ頭を下げ、オレも自室へ戻ることにした。
王子も姫さまも喜んでくれて、あんなに嬉しそうなのに、オレは胸がちくんとするのは何でだろ?
王宮のあの部屋の窓はもう見ないようにして庭を歩く。
雪は降らないまでも、太陽は沈んで寒さを感じた。
end