SS

□愛し子(ゲオカイ)
1ページ/1ページ

数週間ぶりに戻るセラス湖に佇む本拠地。
自室の扉の前に立つと中に人の気配を感じた。

『アイツか…』

真夜中なので恐らく室内の人物は確実に就寝中であろうが、例え意識の無い状態でも久々の恋人に帰城後すぐ会えるのは嬉しい。

どれ、寝顔でも拝んでやろうと気配を消して部屋に入る。

寝台にはやはりお目当ての人物が眠っていた。

『無防備なヤツ…』

寝台のすぐ横まで来たが、カイルは目覚める様子はない。
頭髪を結わず、目もとの朱も引いていないその姿は普段の女王騎士装束の姿とは随分と印象が違う。年齢よりも幼く見える。
時折体が小さく動く様子を観察していると、小さな子供か小動物を連想した。

『自分とほとんど体格も変わらない男にこんなことを考えるとは、俺も随分ヤキが回ったな。』


彼の柔らかそうな金糸を纏う頭に手を伸ばす。さずがに触れれば彼は目を覚ましてしまうだろう。
悪いとは思うが、目の前の幼子への愛しさが己の手を止めることができない。それに目覚めた時のカイルの驚きようも楽しみだ。

俺はカイルの頭を撫でて、ピクっと動く瞼にキスをした。

end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ