カプ向けな20のお題

□05:お泊まりしたい(フェリカイ)
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女王騎士にするためとフェリド様がオレをソルファレナに連れて来てから、どうやら元老院と一悶着あったようだ。
あー、平民で孤児で異国人みたいな顔で教養もなくって悪かったねっ。
戦にも行っていない口だけの貴族どもが散々反対して揉めに揉め、その間1週間ほどオレは客間に留められた。
どこの馬の骨かも分からん小僧に宮殿内を彷徨かれるのも不味いが、万一女王騎士にでもなる可能性もあることを考えれば、無下に扱うこともできない。
それでそういう常態になったようだが、無駄に豪奢な広い客間にいる間は精神的には軟禁状態でうんざりだった。


今日ようやく、オレは女王騎士見習いという立場に決まったという通達を貰い、やっと居心地の悪いこの部屋から出られることになった。
時は既に夕刻のため、一旦、割り当てられたオレの部屋へ案内され待機するように言われた。
女官に案内されて部屋へ入って一人になった。少し落ち着こうとしたが、しかし…やっぱり落ち着かない…

閉じ込められていた客間よりはコンパクトでシンプルな部屋とはいえ、オレの感覚から言えばずいぶんと贅沢な部類に入る。
客間のような装飾品絵画や壷などの装飾品はないとはいえ、家具は種類は必要最低限とはいえるだろうが、しっかりとした造りのものだ。
何よりベッドが大きい。ダブルより大きいんじゃないのーこれ?
オレの貧相な体には勿体無い大きさだ。
ちょっと分不相応だよなーと考えつつ部屋をうろうろしていると、勢いの良いノックがして、答えるまもなくフェリド様が飛び込んできた。


「カイル待たせたな!!」
言うなり抱きしめられた。驚いたけど嬉しい…ここ1週間たまに顔を見れるくらいだったので触れ合えるのは久しぶりだ。

「フェリド様…」
久々の温かい懐は居心地が良くオレもフェリド様の背中に手を回した。

「待たせて悪かったな。聞いたと思うが、お前は女王騎士見習いになる。明日からはみっちり勉強してもらうからな。」

「え…勉強?やだなー。」
オレはおどけて答える。

「そんな顔をしても手加減せんぞ〜。ホラ、クローゼットに衣装が入っているから着て見せてくれ。」
オレの背をトンと押して、フェリド様は傍にあったソファに腰を下ろした。

今更だけど人が着替えるのずっと見てるつもりですか、ヤラシイなーっと思いつつ黒色の衣装に袖を通しながら視線を移すと、そこには温かい目で満足そうにオレを眺めるフェリド様。
…前言撤回。親が子供を見守る眼差しってこんなカンジ?親のないオレにはよく分からないけど、嬉しい。

「衣装も部屋もどうだ?気に入ったか?俺とアルとで見立てたんだが…」

「うーん、とても光栄なんですけど、オレにはちょっと贅沢かなー?」

「衣装はともかく部屋はお前の好みに合わせてかなり簡素にしてみたつもりだが?いずれ女王騎士になる身だ。いくらなんでも一般兵と同じとはいかんしな。」

「そんなもんですかねー。でもこのベッドだって大きすぎますよー。オレはガレオン様やザハーク様みたいにガタイ良くないしー。」

「二人で寝るにはこれくらい必要だろう?」

「はい?」

シレっと言いはなったフェリド様の言葉にオレの頭は一瞬真っ白になった。

フェリド様はいつの間にかお父さんの顔から男の顔へと変わっていた。
ぼうっとしているオレをフェリド様はソファから立ち上がって引き寄せた。

「良く似合う…」

そのまま肩に手を添えて鏡の前へ誘導される。
鏡に映るオレとフェリド様…。同じ黒色の衣装に身を包んで。
これからずっとあなたの傍らにいられるのだ、と思うと胸がじーんと熱くなった。

そのまま後ろから大きな手に抱きしめられ囁かれる。

「ところで…今夜お前の部屋へ泊めてくれないか…?」

「…!」
無性に恥ずかしく、言葉が出てこない。

「泊めてくれんのか?」

いたずらそうな微笑を浮かべて頬ずりをしてくるフェリド様に苦笑しながら、オレは小さな声で
「はい…」
と答えた。


end
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