カプ向けな20のお題

□10:偶然か運命か(ゲオカイ)
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この所ファレナのことを良く思い出す。
親友を亡くした国、親友の息子と共に闘った国、親友の息子同様の男を恋人にした国。
数年たった今このように思い出すのは、やはり現在滞在している北の大陸の人間に金髪・碧眼の持ち主が多いせいであろうか?
嫌でもあの男を思い出させる…

金髪・碧眼の女王騎士。漆黒の騎士服と彼の持つ色が対象的な美しさを放っていた。
その破天荒な行動に振り回されたが、持って生まれた性格に加え、フェリドに育てられた点を考慮すれば、仕方のないことだろう。
彼の内面を知るにつれ、愛しさを覚えるようになった。
戦いの終りが別れの時とお互い認識していたので、俺の出立で二人の関係は終わりとなったはずだったが…

今でも俺は彼に囚われているようだ。光沢のある金髪の長い髪の女性、すらっとした長身の長い手足の若い男の後ろ姿など、彼と少しでも似た要素を持つ者を見かけただけで、奴を思い出す…


そう今も、街の人ごみの中の数十メートル先から歩いて来る男を無意識に目で追っている。
短髪だが明るい金髪で、見事な長身の均整のとれた体。あの頃の彼と同じくらいの年ごろだろう。
美しい碧い眼の持ち主…?

数メートル前まで来ていた男の不思議そうな感情を浮かべた表情を見て、俺はそんなわけはない!と思いながらも人ごみをかき分け足を向ける。
駆け寄って、思わず男の腕を掴んで引きとめた。

「…!?」

いきなり腕を掴まれた驚きで男も声が出ないようだが、俺も同じだった。男の腕を掴んだまま身動きもできない。
金髪の男は髪型以外はカイルそのもので、ただ年頃があの頃のカイルと同じということはやはり別人…?

ふと男が小首を傾げた。あの頃のカイルと同じように。そして口を開いた。

「ほんとに…?ほんものの、ゲオルグどの…?」

「…!?」

俺はまだ声が出なかった。こっちこそ『お前は本物のカイルか?』という心境で、しばらく固まっていた。

「カイル…」
やっとの思いで絞り出したのはその一言だけだった。

果たしてこの出会いは偶然なのか、運命なのか…
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