カプ向けな20のお題
□12:今なら分かる(フェリカイ)
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「オレは貴方を守る為なら、いつだって死ねますよ。」
アーメスとの戦場で、オレはフェリド様によくそう言っていた。
8年前のあの頃、毎日が死と隣り合わせの生活で、オレは本心からそう思っていた。
「嫌です!」
横たわっていた体を起こし、ベッドから出て衣装を整えようとしていた彼に叫んだ。
「そんなにムキになることないだろう?万一の仮定の話だ。」
「例え万一の仮定の話でも…、何でゲオルグ殿でオレはお傍にいさせてもらえないんですか!?」
少し間を置いて、フェリド様は言い放った。
「アイツは強い。」
「う…。」
それきり言葉を継げなかった。
黙り込んだオレにフェリド様は衣装を身につける手を止め、ベッドに近寄り、むき出しのオレの肩に掛布をかけた。
「お前の方がゲオルグより城の内部に詳しい。予定の脱出ルートへ行けない場合、別ルートへ回避する必要がある。
それに脱出するまでに誰かが負傷すれば回復できる人間が必要だ。
…分かるな?」
子供に言い聞かせるように、一言一言ゆっくりと彼は発する。
オレだってそんなことは分かっている。
だけど…傍にいたかった。
たった数か月前のこと。万一の話はあろうことか現実となり、あの頃は一緒に連れて行ってくれなかった彼を少し恨んだりもしたけど…。
無事に太陽宮は奪還できた。
多くのものを失ったけど、ファレナは平和を取り戻しつつあり、姫様と王子とを中心に共和制へ移行しつつある。
長年諍いの絶えなかった隣国アーメスとも友好関係が結べそうで、ファレナ史上最も平和な時代が始まりそうだと世間の民たちは噂している。
フェリド様の判断は全面的に正しかったのだろう。彼の言うようにしていなければ、きっと今のファレナの平和はなかった。
「お前はもっと世界を見ねばならん。」
何かにつけてオレにそういっていたフェリド様の言葉がよく思い出される。
フェリド様はオレに生き延びることを望んでいた。王子や姫様と同じようにオレのことも自分の子供と同様に思っていてくれた。
部下で恋人で子供。そんなオレの扱いに彼も悩んだんだろうな…
あの頃は理不尽だと思っていた彼の言葉だけど、今なら彼の想いが分かる。
「ん…。」
カーテン越しの朝日に目が覚めた。
その時トントンとノックの音と共に声がした。
「カイル?」
「はーい!起きます、起きますからー!」
そろそろ朝は寒くて一人寝の身にはつらいけど、オレ、ちゃんと生きてますよー、フェリド様!
枕元のカフを手に取って耳につけながらオレは思った。
end