カプ向けな20のお題

□16:欲しいのはあなた(フェリカイ前提ゲオカイ)
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夜、カイルが訪ねてきた。

「ゲオルグ殿〜、一緒に飲みませんー?」

酒瓶を手に持って一緒に飲もうと言う。カイルは私服で、既にどこかで少し飲んで来ているようで頬が少し赤い。間延びした口調がさらに舌足らずになっている。

太陽宮の仕事仲間の中ではフェリドを除けばコイツが一番気安く話せる相手である。

急に部屋に訪ねて来るなど初めてのことで少し驚きもしたが、別にうまい酒を断る必要もないので部屋に招き入れた。


「へー、ゲオルグ殿の部屋きれいですねー。意外ー。」
きょろきょろと部屋を見回しながら、ソファに腰をかけるカイル。

「別にきれいにしているつもりはないのだがな。物が少ないからそう見えるのだろう。」
グラスとチーズケーキを用意しながら俺は答えた。

「…酒の肴にチーズケーキですか…?」

「俺のだ。お前にはやらん。」
こういう反応には慣れているので、今さら気にならない。

「オレはいらないですよー。」
ヒラヒラと手を振ってヘラヘラと笑いカイルはぐっとグラスを空けた。どうやらかなりいける口らしい。

「なかなかうまい酒だな…」
俺もチーズケーキとグラスを交互に楽しむ。

そのあと、他愛もない話をしつつ、あっという間にカイルの持ってきた1瓶を空け、俺の部屋にあった酒を出してさらに飲み続けた。

カイルは諸国の話を俺にせがんだ。俺の過去にあたりさわりのない程度に話してやったが、どうやらカイルは外国へいったことが無いらしく、その程度でも随分面白いらしい。
酔った状態で部屋に訪ねて来た時は何か相談事でもあるのかと思ったが、どうやら取り越し苦労だったようだ。
酒を飲み、笑い、話し、終始カイルは一本ネジが飛んでるのかと思うほどの明るさだった。


あっという間に時間は過ぎた。
空瓶が数本床や机に並び、月の角度もすっかり変ったのに気づき、そろそろお開きにするかと、カイルを見ると、さすがに俺よりも酒量を過ごしたせいか、ソファの背にくったりしなだれかかっていた。

「おい、そろそろ部屋に戻れ。お前明日早番だろうが。」

「うー。」
言葉にならない呻きが返事だった。

『まったくコイツは…どうしてくれよう?』

ふと思いついて、グラスの中にあった溶けかけの氷を取り出して向かいのソファに近づく。

カイルを見下ろすと、既に寝に入るつもりか瞼が落ちている。
俺が近づいても起きる気配がない。いつも女王騎士服に覆われた胸元や二の腕が今日は私服のためむき出しで朱に染まっている。
一瞬ためらいを感じたが、こんなことで意識するのも馬鹿らしいと、思いつきを決行することにした。

カイルの服の前あわせの隙間よりそっと手を入れる。

「…ひゃっ!!冷たっ!!」

とたんにカイルは跳ね起きた。

「やっと目が覚めたか。」
水の滴る氷をさらに頬にあててやった。

「もー、ひどいゲオルグ殿!」

「早く起きないお前が悪い。」

「だってー。」
軽口を叩きながらいまだにカイルは立ち上がる気配はない。頬に氷を当てられたまま動く気配はない。

「動けんなら運んでやるが…」
今度は額に氷を当ててやりながら俺は言った。

「恥ずかしいから嫌ですー。」
あいかわらずカイルは動く気配がない。

いつまでぐだぐだしているんだ、コイツは…と呆れていると、ふとカイルの手が俺の手に添えられ、カイルの唇が近づく。

「おい…?」


「ん…おいし…。」
カイルは手の中の氷を口で直接奪っていった。その時彼の舌と唇が指に触れていった。手を引こうと思ったが、カイルの手は未だ添えられており、俺の手は捕らわれたままだ。

しばらく沈黙が続く…。

「オレ…。」
カイルは心なしか瞳が潤んでいるようだ。

「何だ?」

「…オレ…。」

「何でもいいから言ってみろ。」

「貴方が…好き、です…。」

「…は?」

「貴方が好きなんです。」

「だが、お前、フェリドは…」

子供のように首を横に振りながら、瞳は俺を見つめている。揺れる碧い瞳から目が逸らせない。

「オレが欲しいのは貴方…なんです!」

俺を見詰めたままの碧い瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

俺はその瞬間、何もかも分からなくなった。

…捕らわれたのだった。


end






「ホラ、そろそろ
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