カプ向けな20のお題

□18:最初の愛、最後の恋(フェリカイ前提ゲオカイ?)
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あの人は出会った時から他の人のもの。
最初からそんなことは百も承知の上でした。
でも彼は陛下と同じようにオレにも愛を与えてくれた…。
8年間いろいろあったけど、オレね…ほんとに幸せだったんです。


グラスを手で弄びながらたんたんとカイルは話した。
少し目もとが赤くなっているのは酒のせいだろうか。

本拠地の俺の部屋で二人で飲んでいるうちに、だんだんとカイルが話だした。
二人きりで酒を酌み交わすのは久しぶりだ。本拠地のこの部屋では初めてではないだろうか。

俺とカイル、惹かれてあっているのは間違いないだろう。
太陽宮ではしょっちゅう二人で飲んでいたのに、ここ最近は全く無かった。
もちろん俺もほとんど城にいないし、忙しいという理由もあったが、一番の原因はお互いに意識するようになったせいだろうか?

同僚・友人という立場で保っていたバランスはフェリドがいなくなってしまったことで簡単に崩れた。少なくとも俺の中では。


お互いに踏み出せないのはカイルが過去をまだ昇華しきれていないからだろうか?
俺がフェリドとアルシュタートの死の責任を引きずっているせいだろうか?

今日、カイルは大分酒が進んでからではあるものの、己の過去の話を始めた。
今までなら“真面目な話題は酒がまずくなりますー”とか言って、バカ話か女の話しかしなかったカイルが…だ。

8年間に渡るフェリドとの関係を俺に話すのは並大抵のつらさではないだろう。
カイルは知らないだろうが、俺はフェリドにだいたいの事情は聞いていた。
もちろんずっと何も知らない振りをしていたため、カイルは意を決して関係を告白してきたのであろう。
世間では過去のことなど相手に伝えずにつきあうことなどざらにあるのに、この男はなんとまっすぐで不器用なのだろう。愛しさが募る。

カイルがフェリドのことを話すのは、自分の気持ちを整理する為だろうか。
思えばレインウォールで再会した時のコイツは見かけの元気さとは裏腹に心はボロボロでひどい状態だった。
なのに俺やファルーシュの方を優先して心を配っていて、自分のことは後回し。
本拠地を手に入れ、共に闘う仲間も増えやっと自分のことに目が向くようになったというところか。



心配で目が離せない…。フェリド、お前が心配してた気持がよく分かる。コイツは他人に優しすぎる。自分を甘やかさない。


カイル。何も心配することはない。
お前の過去も含めてお前が欲しい。
だから、お前も気持ちに整理がついたら、自分の想いを自覚したら、何も気にせずその手を俺に伸ばしてくれ。
お前の心に引っ掛かっているものがあるのなら、それが溶けるまで俺は待っているから。

「…ゲオルグ殿?」

「何だ?」

「もう一杯もらっていいですか?」

「ああ。今夜は過ごせ。」

「ありがとーございます。」

夜はまだ長い。もっと飲んで、溜まってるもの吐き出せ。

「今夜はとことん付き合ってやるからな。」

「ありがとーございます、オレ嬉しーですー!」



数時間、飲んで話して、明け方にはカイルはソファにもたれこんで眠っていた。
毛布でも掛けとけばよいか、と予備の毛布を戸棚から出して戻ってくると、その頬に涙の筋があった。


『…疲れたか?よく頑張ったな…。』
ゆっくり休ませてやりたくなった。彼を抱きあげてみると、鎧を着けてないせいか、思ったより簡単にベッドに運ぶことができた。

シーツの端で涙を拭いてやり、頭を撫でてやると、なんだかカイルがやすらかな表情になったような気がした。
俺も触れた彼の髪の柔らかさに、ずっと彼の頭を撫でていたい気持ちになった。

ただそれだけで幸せを感じるなんて俺も初めてことだだ。
だからこそ俺にもカイルにもこれが最後の恋になればいい…。
そう思いながら空いている片手でカーテンを引き、閉めた。
明け方の冷え込みに手の中の温もりが心地よかった。

end
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