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□ハロウィン ネタ(フェリカイ)
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地下牢の部屋で一瞬にして大勢に囲まれていた。明らかにこの世の物でないモノたち。
無理かとは思うけど知らない振りをしてやり過ごして出られないか…と考えたその時、一際体格の良い銀髪の男が口を開いた。

「お前、私たちが見えておるのだろう?その格好は女王騎士か。
帰さぬぞ…。」

そう言いながら銀髪の男を筆頭にバケモノ達が近づいてくる。銀髪の者が多いというのは恐らくファレナの長い歴史の中で葬られてきた王族がいるのだろう。せめて王子を逃がさなければ…

「お前の後ろにいるのはその髪からすると王族だな。我々の恨みを少しはらさせてもらおうか。」

『ダメだ…王子だけでも守らなくては…』

肉体を持たない死者に剣は通じない。オレの水の紋章ではたぶん通用しないけど、時間だけでも稼げたら王子を逃がせるかも…」
冷や汗が背中を伝う。



銀髪の男の手が触れたとたん、体から力が抜け落ちた。
男がオレの上に乗ってきた。男の手が体中を這いまわる。その度に力を奪われていくようだ。
しばらくして苦痛が和らぎ、頭の中に男の声が響いてきた。

『お前を気に入ったぞ…私の卷族になれ。我ら恨み重なる現王族の血筋絶やさんが為働かぬか。
さすればお前の愛する男はお前だけのモノとなるぞ。』

『…誰がそんなこと!』

『ならば今日はお前とあの子供をいただくとしよう。』

どんどん寒くなってもう何も感じない…。お……じ…




悪夢から覚めた時、そこはフェリド様の部屋だった。
すぐ横にフェリド様は腰かけてベッドのオレを見ていた。
オレは地下牢でのこと、地下通路でのことを思い出した。

「助けてくれてありがとうございます…。王子は?」

「ファルは何とも無い。安心しろ。お前はファルを庇ってくれたのだろう?すまなかったな。」

「いーえ、王子があそこへ行くの止められなかったし、あんなバケモノがすぐ近くに来るまで気づかなかったし、何もできなくて…オレこそすみません…。」

「お前たちが無事ならそれでいいんだ。」

フェリド様はオレの手を握っていった。

「まだ手が冷たいな…風呂に入れてやろうか?」

「ん…お風呂入りたいですけど、一人で入りますー。」

とオレは言ったはずなのに、オレがまだ足元がふらついている、と言い張ってフェリド様は風呂に一緒に付いてきた。オヤジだから仕方がないか…。

オレは一生懸命体を洗う。服を着ていたのにあの男の手は素肌の上を這いまわった。感触が思い出されて気持が悪い。

「背中を流してやろう。」
とフェリド様が背中をこすりだした。

「ありがとうございますー。全身触られて気持ち悪くって…」

ふと空気が変わったことに気づきフェリド様を見ると、顔には怒りが浮かんでいる。

「体を触られたのか!?」

「そんなに怖い顔しないで下さい…。」

無理やりとはいえ、触られたことには変わりがない。オレは小さくなった。

「俺は別に幽霊相手に怒っとらんからな!」

とはいうものの背中をこする力がどんどん強くなった。

背中が終わると体の向きを変えさせられた。

「前は自分で洗えますからっ!」

「いーや、俺がやる!」

諦めてオレはフェリド様へ身を委ねた。


その晩は、フェリド様に腕枕をしてもらった。オレの体力を心配してくれてセックスするつもりはないようで、オレたちには珍しく穏やかな時が流れている。
ぽつぽつと話をする。

「一体何が地下牢にいたんだ?」

「え、見えてなかったんですか?」

「ああ。俺にはそういう才能は全く無いからな。もの凄い血の臭いがして殺気のようなモノは感じたが…。」

オレはバケモノの中に銀髪が多かったことや、襲ってきた銀髪の男を思い出し、口に出したくなかった。

「…今は言いたくないです。」

「そうか。」

「あれ、何だったんでしょう?あんなに力の強い死者は初めてです。」

「お前も知っていると思うが、ファレナの王族、貴族の歴史は血で血を洗うものだった。あそこは過去に使われていた座敷牢の様なものだ。強い恨みを抱いて死んでいったものばかりだ。
そこへ王族と一目で分かるファルーシュが飛び込んだ。
後な、紋章官に言わせると時期が悪かったそうだ。今はあの世とこの世の境目が薄くなる時期らしい。死者の力も大きくなる。」

『そうか、二つの原因が合わさってあんなことになったのか…運悪ー。』

「オレ、破魔の紋章も勉強しようかな…。」

「まず、今日みたいなことが起こるとは思わんが、珍しくお前が自分から勉強すると言っとるから、応援するぞ。」

「ひどっ。」

はは、と笑いながらフェリド様はオレを胸に抱きしめてくれた。

『−お前だけのモノに−』
銀髪の男の声が頭をよぎる。

『違う…』

この温かさに抱きしめられる一瞬だけでオレは十分だ。男の声を追い払う。

「もっとぎゅっとして下さいー。」

「うん?よしよし。」


今はもう男の声は聞こえない。


end
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