短編小説

□恋心
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閑静な場所にある、白い建物。
政府要心専用の病院。
最先端医療を取り入れ、治療技術も世界屈指の病院で、ジノとルルーシュは出逢った。

KMFの模擬戦闘練習中に痛めた脇腹の打ち身がなかなか治らず、痛みと微熱が続くため嫌々ながら久しぶり病院に足を運べば、肋骨にひびが入っている事が判明。
人一倍、身体を鍛えていたという事と体力があった事で、完治も早いらしい。
それでも暫くは診察に来る事と安静にしている事を主治医に言い渡され、ふてくしながら院内を歩いている時に、ルルーシュと出逢ったのだ。

出逢ったと言っても、病院の中庭にある木陰のベンチで本を読んでいたルルーシュに、ジノが一目惚れしたにすぎない。
女好きなジノが一目惚れする事じたいない。ジノから女性を好きになる事は全くない。

ルルーシュに話しかけようと思ったのも、いつもと同じ暇潰しで。己の美貌に落ちない女性はいないと、自負していたからだ。


―――――あの女性も私の美貌で簡単に落ちる。


何処から出てくるのか、その自信は・・・
それは百戦錬磨の成せる自信であるのだろう。


「何か用か?用も無いなら邪魔しないでくれないか。良い場面なんだ」


だからルルーシュからの辛辣な態度は、ジノのプライドをズタズタに傷つけた。
自分の魅力を持ってしても落ちない女性は初めてだった。
それよりも絶世の美貌の黒髪の少女は、文庫本から目を離さず、見た目に反する態度を見せる。


「用は無いけど、私と少し話をしませんか?」
「断わる」


にべなく断わられ、再度ジノのプライドはボロボロと崩れさった。

それでも諦めないのが、ジノ・ヴァインベルグの長所だ!(周囲からは迷惑がられるが・・・)


「貴女のお時間を少し頂けませんか?私は貴女とお話がしたい」


人好きされる優しい笑みと、完璧な紳士口調。
ここまでジノの本気を出させた女性は数少ない。紳士態度のジノに落ちない女性はいなかった。

いなかったのだ!

パタンと静かに本を閉じ、紫の瞳をジノに向け、微笑む。
その微笑みにジノの頬は少し赤みを差した。


「貴方のような身分の方に、お暇があるようにお見受け出来ませんが?ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ卿」


その言葉だけを残し、少女は病院の方向へ歩き出す。
残されたジノは「私の事、知っていたんだ」と、ポツリと呟き苦笑する。

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