短編小説

□過ぎ去りし愛しき思い出
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薔薇が咲きほこる皇帝宮。

その皇帝宮より遥かに離れた寂れた場所に、人気のあまりしない離宮がひっそりと建っていた。

離宮に勤める侍女は全て主人に崇拝している者達。
警備の兵士達でさえ、離宮の主人に敬愛と尊敬を持つ者で固められている。

他の離宮とは違い、警備兵の士気も、侍女の心意気も違う。
誇りも他とは違うのだ。


絢爛豪華な他の離宮とは違い、質素ではあるが癒しを求める者達にとってその離宮は心休む屋敷だった。


離宮名は『アリエス』。離宮の持ち主の名はマリアンヌ。

その離宮の持ち主である皇妃は、とても慈愛に満ちた女性である。


騎士候だったからとはいっても、庶民出身の皇妃は他の皇妃から疎まれ命を狙われていた。

アッシュフォード家の後見、市民からの支持の高さが唯一皇妃と子供達を守っていた。
それにマリアンヌ自身に憧れや好意を持つ皇族や貴族も少なくはない。

上位継承権を持つ皇子、皇女ほどマリアンヌに懐いていた。

彼女が誰に対しても対等に接するのが彼等にとって新鮮で“自分自身を一人の人間として”見てくれる女性だったからだろう。


己も彼等と同じ理由でマリアンヌに憧れを持つ1人ではあった。


名門貴族の子息でも関係無く、悪戯をすれば殴られたのは記憶に新しい。(あの衝撃は未だに忘れられない。本当に目の前に星が飛ん
でいた)




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